リハビリは「一歩手前のところで」メニュー作成 柔道阿部詩の付き人・森和輝さん パリ五輪開幕まで50日 支える人②
柔道女子52キロ級で五輪連覇を狙う阿部詩(パーク24)には実の兄で男子66キロ級の一二三(同)だけでなく、もう一人、〝お兄ちゃん〟と呼べる存在がいる。 【写真】3月のグランドスラム・アンタルヤ大会の金メダルを手にする阿部詩と森和輝さん 付き人となって5年目になる森和輝さん(26)。当初は2021年東京五輪で区切りとなるはずだったが、五輪後間もない時期に両肩を手術するなど、慌ただしい日々を支えるのは森さんしかいなかった。「パリまで3年ということもあったので自然な流れだった。信頼してくれているのも感じるし、それが自分のやりがい」。二人で歩む道は、気づけばパリへと続いていた。 練習パートナーであるだけでなく、対戦相手の研究や練習計画の作成など、役割は多岐にわたる。最も苦労したのは21年秋、両肩手術後のリハビリだった。 気持ちがはやり、歩いていいといわれると走り、走っていいといわれるとダッシュするのが詩だという。本人のいないところで医師と相談し、リハビリメニューを練った。「『一歩手前のところで言っておいてください』といわれていた。そうしたらちょうどいい感じになりました」と苦笑いしながら振り返った。 詩が腰を痛めたときには、病院でマッサージを教わり、練習前後に自らの手で施すこともあった。門外のことでも次々と新たなスキルが必要となり、懸命に身につけてきた。「自然と(新たな知識を)つけざるを得ない状況ですよね。でも、いい経験です」。将来的には指導者を志す自身にとっても貴重な学びととらえ、ともに成長する日々を過ごしてきた。 元々は日体大柔道部出身で、一二三の同級生だった。競技から退き、卒業を控えていた19年11月、東京五輪代表選考会の一つだったグランドスラム大阪大会で練習パートナーを務めたのが始まりだった。「練習したことを試合ですぐに出してくれる。これだけ(練習の成果を)証明してくれる選手っていない。それがやりがいにもなるし、楽しい」。積み重ねてきたすべてをパリの畳で発揮し、再び金メダリストになることを信じている。(大石豊佳) ■枕は必需品「稽古の次に大切」