「1988年以前に集団予防接種」を受けた人は要注意!...職場健診に追加すべき検査項目
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第27回 『「ヤバすぎる”がん”」の予兆…健診結果の謎項目「T-BIL」を軽く見てはいけない怖い理由』より続く
HBs抗原検査
B型肝炎ウイルス(HBV)感染のスクリーニング検査です。職場健診に入っていない会社が多いと思いますが、希望すれば自己負担で追加できるはずです。採血だけで分かるので簡単です。 ウイルス感染の検査には、抗体検査と抗原検査がありますが、B型肝炎は抗原検査です。HBs抗原は、HBVの表面を覆っているタンパク質のひとつで、感染していれば血液中に検出されます。 HBVは、主に母子感染によって、母親から子供に伝わります。妊娠初期(23週目まで)に母親の血液検査を行うことになっています。 母親が陽性の場合は出産時に母子感染するリスクがあるため、しばらくしてから子供の検査も行います。母子感染の子供はHBVの無症候性(症状が出ない)キャリアになります。
予防接種で集団感染!?
その後は成長に伴って、軽い肝炎症状が出ることもありますが、大半は本人も気づかないまま治ってしまいます。 しかしウイルスが体内から消えることはありません。中高年になって免疫力が落ちてくると肝炎が再発し、やがて肝硬変や肝臓がんに進展することがあります。日本人の肝臓がんの約40パーセントは、B型肝炎が原因と言われています。 気をつけなければならないのは、インフルエンザなどの集団予防接種による感染者です。昭和63年(1988年)までは、集団予防接種で注射器の使いまわしが行われていました。そのためかなりの人数が、無症候性キャリアになっているはずですが、正確な数字は分かっていません。 感染していても安定していれば、肝細胞がダメージを受けることは少なく、ASTやALTの値には、ほとんど影響がありません。そのため普通の健診がきっかけで見つかることはあまり多くありません。 病院で手術などを受ける際には、必ずHBVの検査も行われるため、そのとき初めて自分が感染していることを知った、というひとも少なくありません。しかしそういう機会がなければ、本人が進んで抗原検査を受けない限り、自分がキャリアかどうかは分からないのです。 HBVに感染していると分かったら、専門医を受診しましょう。より詳しい検査で、いまの状況を正しく把握できますし、すぐに治療が必要かどうかも分かります。 治療は薬物療法です。いまのところHBVを完全に排除する薬はありませんが、ウイルスの数を減らす薬は実用化されています。また肝細胞をウイルスのダメージから保護する薬もあります。適切に治療すれば、肝硬変や肝臓がんのリスクをかなり減らせるはずです。 感染が心配というひとは、せっかくの機会ですから、健診に追加して調べてもらうといいでしょう。とくに1988年以前に集団予防接種を受けたひとは、要注意です。 『「日本人の“肝臓がん”の原因は半数がコレ!」…健診で「HCV陽性」と言われたら必ずやるべき「たった一つのコト」…』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)