なぜIBF世界王者の尾川堅一は2回ワンパンチKOで王座転落の悪夢を英国に見たのか…「(敵地の雰囲気に)のまれたのがすべて」
プロボクシングのIBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチが4日(日本時間5日)、英国ウェールズのカーディフで行われ、王者の尾川堅一(34、帝拳)が同級3位のジョゼフ・コルディナ(30、英国)の右ストレート一発に沈み、2回1分15秒KO負けで初防衛に失敗し王座から陥落した。尾川は、昨年11月に米国で行われた王座決定戦でアジンガ・フジレ(25、南アフリカ)から3度のダウンを奪う判定勝利でプロ28戦目で悲願の世界ベルトを腰に巻いたが、完全アウェーの敵地でベルトを守ることができなかった。これで尾川が26勝(18KO)2敗1分、コルディナが15戦全勝(9KO)となった。
「実力の無さを痛感」
英国ウェールズの地に悪夢を見た。 まさしく一瞬の隙だった。2ラウンド。コルディナは頭を下げ、ボディを狙うフェイントをかけた次の瞬間、思い切り威力のある右ストレートを尾川のアゴめがけて打ち込んだ。左ガードを下げていた尾川は反応できずに、もろにその強打を浴びて、大の字にダウン。なんとか起き上がろうとしたが、足が言うこと聞かず、もう一度、ごろんと仰向けになった。そこでレフェリーがKOを宣告した。 尾川の入場曲がかき消されるほどの大合唱でコルディナを後押ししていた敵地のファンは、まるでお祭り騒ぎ。ダメージを負った尾川は、リングの中央に用意されたイスに座ってうなだれた。 「申し訳ないです、それに尽きます。(雰囲気に)のまれたし、コルディナ選手も強かったですし、それがすべてなんですけど…やっぱり自分自身の固さというか、実力の無さを痛感したのが今の思いです」 海外リングの経験は豊富だが、ここまで完全アウェーの雰囲気は初体験。異様な熱気に圧倒されてしまったという。 リング上では世界初挑戦でワンパンチKOを演じたコルディナがインタビューに応じた。 「素晴らしい気分。今夜ここでファンから受けたサポートは信じられないほどのものだった。何事も不可能はない。神に感謝したい。そして今夜ここに来たすべての人々に感謝したい。生涯をかけての練習を今夜の5分半にぶつけることができた。言葉にならない」 1ラウンドは、尾川のスピードに乗った左のジャブが効果的で、打ち終わりを狙った左のフックにコルディナがバランスを崩した。尾川のパンチを警戒しているコルディナのガードの上からワンツーを続けて打ち込みペースを握りかけていた。左ジャブのカウンターも打たれたが、左右のボディへのアタックと左のカウンターなど、ここから先にポイントになりそうなパンチを放ち、ジャッジ2人は、尾川を支持していた。 試合後、そのことを聞かされた尾川は、「ポイントは僕だったんですか?なおさら悔しいですね」と、意外な反応をした。 「自分のジャブだったりフックだったり感触が良かったというのはあったんですけど、全体的な流れとして、やっぱ相手の地で戦っているという部分で、自分が1ラウンドに行けたなという気持ちになれていないのが、やっぱり2ラウンド目に出てしまったのはあると思います」 冷静な自己分析ができていなかったのである。