冷めても〝おいしい〟米「ミルキークイーン」人気 用途広く作付け拡大
35府県で生産 検査数量が1・3倍
米の品種「ミルキークイーン」の作付けが拡大している。粘りの強い特徴的な食感で、家庭用米では固定ファンを獲得。「冷めてもおいしい」との評価から、弁当などの中食用でも引き合いがある他、健康志向から人気が高まる玄米食用に採用する動きもある。 【グラフで見る】ミルキークイーンの検査量の推移 農水省がまとめる農産物検査結果によると、「ミルキークイーン」は東北から九州まで35府県で生産され、茨城県が最多となり、福島、新潟、長野と続く。近年、増加傾向で、2023年産の検査数量は2万5300トンと10年前に比べて1・3倍に拡大した。でんぷんの一つ、アミロースの値は9~12%とされ、「コシヒカリ」(18%前後)などよりも低く、もち米とうるち米の中間の、粘りが強い特徴を持つ。 茨城県のJA稲敷では、国内で最初に栽培した稲敷市東地区にちなんだ「あずまミルキークイーン」の生産販売に取り組む。新利根直売所では、9月の新米シーズンに東京や神奈川など県外客が訪れて開店を待ち指名買いする人気ぶりだ。
中高年層に根強い人気
直売所での販売価格は「コシヒカリ」よりやや高いが、販売量は「コシヒカリ」を上回る。昨年9月の新米フェアでは1日で1・5トンを販売する人気だ。24年産は全国的な米価上昇で、5キロ(白米)3900円、30キロ(玄米)1万8500円と例年より高いが、「ミルキーの人はミルキーと決まっている」(加藤洋子店長)ことから中高年層を中心に根強い人気を誇る。 JAのあずま米産地づくり推進協議会では、水管理や適期収穫などを通じた良質米生産に取り組み、首都圏の大手スーパーで販売する。JAの根本作左衛門組合長は「個性がある米なので、誰にでも好まれるのは難しいだろうが、米の好みも多様性の時代。リピーターを着実に獲得していきたい」という。 粘りが強いため冷めても食感がパサつかないのも特徴で、中食でもニーズがある。仕出し・宅配弁当の米銀商店(茨城県古河市)は、山形県産「コシヒカリ」と茨城県産「ミルキークイーン」を配合した米飯を使う。「炊きたてご飯はどの米でもおいしいが、冷めてもおいしいご飯となると、ミルキークイーンが欠かせない。食感やつやが全く違う」と語る。他の品種も試す中で行き着いた配合だという。「相手の特徴を消さずに、粘りを出せる」(関西の米穀店)との評価もある。 近年の健康志向で需要が高まる玄米食用にも、引き合いがある。大阪市の西川米穀店は兵庫県の生産者による「ミルキークイーン」を玄米ご飯用に勧める。同店は「粘りが強く、玄米食特有のぱさぱさした硬い食感がないため、初心者でも食べやすい」と評価する。 (玉井理美)
日本農業新聞