『ゴールデンカムイ』山崎賢人×山田杏奈×矢本悠馬にインタビュー!仲良し3人組が語る、極寒の撮影エピソードとは?
大ヒット公開中の今冬最大の話題作、映画『ゴールデンカムイ』。原作は2014年~2022年まで集英社「週刊ヤングジャンプ」に連載されていた、野田サトルによる同名コミックで、現在シリーズ累計売上2700万部を突破中のモンスター漫画は、TVアニメも大好評を博し、連載が終了したいまも、その人気が衰える兆しはまったくない。ほとんどの日本人が知らなかったアイヌカルチャーの豊かさを全国に知らしめた漫画としても、多大なる功績を残したと言えるだろう。 【写真を見る】「雪の日の撮影では『粉雪』を熱唱」というほっこりエピソードも。『ゴールデンカムイ』のなかよし3人組にインタビュー! 時は明治末期。日露戦争終結直後の北海道で繰り広げられるのは、アイヌの莫大な埋蔵金をねらう者たちの雪をも蹴散らす激しい死闘だ。個性豊かなキャラクターたちが次々に登場し、全員がそれぞれの理由と正義を胸にこの一攫千金に人生を賭ける。北海道の雄大で厳しい自然の中、命がけのサバイバルアクションに挑む猛者たち――。原作のスケールが壮大過ぎるゆえ、実写化はまず不可能だろうと言われ続けてきた作品でもあるが、自身も「原作の熱狂的なファン」と公言する久保茂昭監督と原作愛にあふれたスタッフの手により、「原作リスペクト」を貫いた完全映画化が実現。超大作にふさわしい豪華キャスト陣が集結した。 “不死身の杉元”の異名を持つ元陸軍兵の主人公、杉元佐一に山崎賢人、野山を軽やかに駆け回る誇り高きアイヌの少女、アシリパに山田杏奈、柔軟な体を駆使して全国の刑務所から脱獄してきたお調子者の“脱獄王”白石由竹に、矢本悠馬。真冬の過酷な長期北海道ロケを共にし、すっかり意気投合した3人に撮影現場のエピソード、作品への熱い想いを語ってもらった。 ■「プレッシャーは強かったですが、杉元を演じたいと強く思いました」(山崎) ――熱狂的ファンも多くいる原作ですが、最初にお話が来た時は率直にどのように思われましたか? 山崎「まず原作がめちゃくちゃおもしろい。設定もキャラクターたちの描かれ方もすべてがおもしろくて惹かれました。杉元に関しては自分と年齢が近い役で、これまでやってきた役柄と比べると大人の男だし、見せたことのない自分を見せられる新たな挑戦になるなと。大人気の漫画なので当然プレッシャーは強く感じましたが、それでも杉元という男を演じてみたいと強く思いました」 山田「私はこんなおもしろい原作ならもうアシリパの役は決まっているんだろうと思っていたのですが、最終的に自分に決まった時は、いままでで一番うれしかったです。ただ、喜んだあとに不安がやってきて…。果たして自分にこんな大役が務まるのだろうかと悩んだ時期もありましたが、原作を読んで作品にもアシリパにも愛情がわいていたので、魅力的なアシリパに見えるようがんばろうと思えました」 矢本「もともと原作の大ファンで、しかも白石が自分の“推しキャラ”でした。だから白石役に決まった時は役者冥利に尽きるというか、こんな奇跡みたいなことが起きるんだ!とうれしかったです。この作品に限らず人気のある漫画の場合、原作ファンから“実写化はしてほしくない”みたいな意見が出ることもありますが、僕は役者という仕事をしているので本当にワクワクしたし、これは夢のような体験になるに違いないと確信しましたね」 ――山崎さんと矢本さんは以前に共演経験があり(2014年のドラマ「水球ヤンキース」)旧知の仲だと思いますが、久々の共演でお互いの変化などは感じられましたか? 山崎「本当に久々だったんですけど、変化は…感じなかったかもしれないです(笑)。今回も事前に連絡などは取らなかったんですが、初日の現場で“久しぶり!”という感じで」 矢本「中身も外見もお互いあまり変わってなかったかもね。賢人はあのころから人として完成されていたし、変えるところがないくらい欠点がなかったので。まあ、お互いなんですけど(笑)」 山田「お互いなんですね(笑)」 ――山田さんは先輩にあたるお2人の印象はいかがですか? 山田「私はお2人とも今回が2回目の共演になりますが、山崎さんとはここまでがっつりお芝居したのは初でした。でも本当に話しやすくて、フランクな方だなという印象は変わりません。矢本さんも同じで話しやすいしフランクで…おもしろい方です」 矢本「俺のほうが印象がひとつ多かったですね!」 山崎「(笑)。今回3人が初めて揃う初日は、矢本くんの初日でもあったんです。僕と杏奈ちゃんは既に何日か撮影していたんですが、いきなり3人で桜鍋を囲むほのぼのしたシーンから矢本くんはスタートして」 矢本「あんなに楽しみにしていた撮影なのに、意外とガチガチに緊張していました(笑)。現場の雰囲気もわからなかったので、どこのチューニングでいけばいいか迷ってしまって。事前に監督から2人の映像は見せてもらっていたんですけど、ヒグマと戦うシリアスなシーンだったので、全然参考になりませんでした」 山崎&山田「(笑)」 矢本「でも自分が白石として出演することで、『ゴールデンカムイ』のクスッと笑える場所、落ち着ける時間みたいなものが出せればいいなと思ったので、とりあえずいろいろとカマしてみましたね。調子悪かったですけど(苦笑)」 山田「あれで調子悪かったんですか!?全然そんな風には見えなかったです」 矢本「がんばりました。技術じゃなく(胸を叩いて)心でやりました」 山田「かっこいい!」 山崎「でも冗談抜きで白石が降りてきてましたよね。原作のまんまの白石だなと思って」 ――あのシーンは劇中でも、3人の関係性がかなり打ち解けたものになっていますが、監督からの演出や空気感などはどのように構築されていったのでしょう? 山崎「監督からはそんなに細かいことは言われなかった気がしますね。楽しいシーンだったので、自然な空気で撮影できていたと思います」 矢本「でも杏奈ちゃんは最初は俺ら2人に壁を作ってましたね。“この人たち、現場に遊びに来てるのかな?”という視線は感じました」 山田「そんなことないですよ!」 矢本「それくらい俺らが少年のように無邪気だったから…」 山田「自分で言わないでください(笑)。でも確かに山崎さんは、現場に矢本さんがいらっしゃる日は、一気に少年感が増してました」 山崎「(笑)。楽しかったから。最初から3人のシーンはいろいろ自由に話していたと思います」 山田「男性が多い現場だったので、私は入れる話題の時と“ちょっといまのは聞かなかったことにしようかな”という話題の時がありました(笑)。でもお2人に限らずキャストさんスタッフさんもとても気さくで、私はずっと居心地のいい現場でしたね」 矢本「雪の日の撮影は、必ず3人でレミオロメンを熱唱してたしね」 山崎「『粉雪』ね!必ずと言っていいほど歌ってましたね。懐かしい」 ■「矢本さんが裸なので、ここでミスしたらやばい!と必死でした」(山田) ――桜鍋のシーンはもちろん、今回たくさんのおいしそうなアイヌ料理が登場するのも見どころのひとつかと思います。 山崎「本当に全部おいしかったです。もちろん劇中の食材(リスやカワウソなど)をそのままいただいているわけではないのですが、限りなく味や見た目が近いものを毎回用意してくださって。鹿とか猪とか…」 山田「おいしかったです!お肉以外でもニリンソウなど、私は初めて食べるものばかりだったんですが、どれも滋味深いしみじみとしたおいしさがあるんです。休憩の時にいただくケータリングも、アイヌ料理を用意してくださったんですよね」 矢本「うまかったねぇ。寒い日の汁物とかは本当にありがたかった」 ――ペットボトルの水も氷るほどの極寒の撮影でしたが、あの環境下でのお芝居やアクションは相当カロリーが高かったのではないでしょうか。 山崎「大変でしたね。矢本くんは雪の中で上裸になるシーンが多かったので、矢本くんと一緒のシーンではとにかくNGを出さないようにしよう!とは思っていました」 山田「私もです。ここでミスしたらやばい!って」 矢本「そんなこと思っててくれたの?2人とも優しいなぁ」 山崎「矢本くん、最初は(裸に見える)インナーみたいなのを着ていた時もあったけど、結局全部脱いでたもんね」 矢本「せっかくこれだけの大自然の中で撮っているんだから、裸になっちゃったほうが画的にも絶対いいなと思って。スタッフさんはいろいろと配慮してくれてありがたかったですけど、最終的にはリアルに脱いでいるカットのほうがほぼ使われていましたね」 山崎「アクションに関しては、僕は素手で戦うアクションが初めてだったので難しかったです。杉元は元軍人なので、軍人らしい動きを習得するのが大変で。杉元はちゃんと日本の武術を習得した男なので、ある種冷静に戦うシーンと、周りが見えなくなる“ゾーン”に入っている時で戦い方を変えていこうと、監督とも話しました。あとは銃剣の練習かな」 矢本「(模造刀の)銃剣を買ったんでしょ?」 山崎「買った。家で装填の練習はかなりしましたね。銃剣って銃の先端に装着するとかなりの長さになるので、振り回されちゃうんです。“長(なが)もの”って言うんですけど、感覚としては槍で戦っているくらいの大変さがありました」 山田「私はアクション自体がほぼ初めてだったので、アクション部の方に助けてもらいながらなんとか。それこそ最初は前転の練習から始まって、走る練習や受け身の練習もかなりしました」 山崎「受け身はアクション練習の基本だからね」 山田「そうなんですね!弓を射るシーンも難しかったので、家のカーテンに(模造品の)矢を放って練習していました。撮影時はカメラマンさんがレンズの前にアクリル板を置いて『できたらここに当ててほしい。もしうまく当たったら北海道のまりもをあげるよ』とおっしゃって。かなり距離があったんですが、がんばって当てたら本当にまりもをくれました(笑)」 矢本「そんなことが(笑)。そう言えばアシリパの登場シーンは、めちゃくちゃかっこよかったよね」 山崎「本当にかっこよかった!弓を射って杉元を助けるシーンですね」 山田「あそこはアクション監督の方が弓矢の先に雪を乗せて、弾いた時にパ~ッと雪が舞うようにしてくれたんです。撮り方もすてきだったので、自分で見た時も“かっこいい!”と思いました」 矢本「僕はヌルヌルのシーンが多くて…体がおかしくなりそうでした」 山崎「救出シーンね(笑)」 矢本「体中にオイルを塗って窓の鉄格子をすり抜けるんですけど、“途中から撮るので逆立ちして待っていてください”と言われて。でも体中がヌルヌルだからどうしても滑ってしまうので、それを無理矢理握力でグッと押さえ込んでいたら体中が痛くなってしまいました。しかも床の板がギザギザだったので、乳首がとれたんじゃないかと」 山崎「(笑)」 矢本「今回は寒いを超えて痛いと感じるシーンが多くて。賢人と2人で真冬の川に落ちるシーンも実際自分たちでやっているので、乳首がなくなったか心配になりました」 山田「あそこはどれくらい時間をかけて撮っていたんですか?」 山崎「まる1日かな。一応中にドライスーツは着させてもらっていたんですが、顔や手は出ているので本気で寒かった。あの震えはリアルな震えです!」 矢本「あそこは俺らのドキュメンタリー。あのシーンの自分の芝居はどこか変ですもん(笑)。寒すぎて逆に血が湧いてるっていうか、正直あまり記憶がないです」 ――本当に見どころの尽きない本作ですが、最後に公開を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。 山崎「アクション、コメディ、グルメ、人間ドラマ…とにかくいろんな要素が盛り込まれていて、見たことのない日本映画になっています。是非大きなスクリーンでご覧ください」 山田「私の周りでも『楽しみにしてるよ』って言ってくれる方が多いんですが、皆さんに一切の謙遜なく『めっちゃおもしろいです!』と言える作品に仕上がりました。新年の始まりにふさわしい1本になったと思いますので、是非よろしくお願いします」 矢本「僕自身プライベートではそれほど喜怒哀楽がない人間なんですが(!?)、この作品を見終わったあとはめちゃくちゃ興奮しました。つまり“最高におもしろい”ということです!」 取材・文/遠藤薫 ※山崎賢人の「崎」は「たつさき」、アシリパの「リ」は小文字が正式表記