『相棒』水谷豊と寺脇康文が見せた見事な連携プレー 「トリオ・ザ・捜一」のアクションも
「人生を振り返りながら行く旅は、センチメンタルジャーニー」 美和子(鈴木砂羽)が松本伊代が歌う「センチメンタルジャーニー」の振り付けを踊る横で、右京(水谷豊)がしみじみと語った後、場面はいきなり弘前行きの夜行バス乗り場へと切り替わった。そしてそこには、なぜか1人で弘前行きの切符を買う右京の姿が。1週の休みをはさんで放送された『相棒 season22』(テレビ朝日系)の第8話は、右京と亀山(寺脇康文)が久々の別行動で見事な連携プレーを見せた回となった。 【写真】『相棒 season22』第9話にゲスト出演する赤ペン瀧川と水谷豊、寺脇康文 北に向かう高速バスに乗り込んだ右京は、うきうきとした様子で隣席となった老婦人・尾上絹(中尾ミエ)に話しかける。怪しい。昔よりは人当たりが良くなったとはいえ、右京が見ず知らずの女性に気軽に話しかけるだけでなく、出身地や子ども、孫の有無まで聞いているのだ。さらに右京自身について聞かれると、現在は連れ添っている妻がいないはずなのだが「妻は昨年、亡くなりました」と顔色を変えずに答えていた。おかしい。やがて右京は、絹の犯歴照会を角田(山西惇)に依頼した。どうやら、絹になんらかの疑いをかけているようだ。一方、亀山は不審車両を追跡し、都内の工場街で偽造ナンバープレートが複数ある、犯罪グループのアジトらしきものを発見する。実は2人は、老婦人と孫のような女性が歩いている途中、女性だけが突然拉致される現場を目撃。すぐに止めに入ろうとする亀山を制止して、老婦人の方に見覚えがあった右京が彼女を追って北へ、亀山が拉致された女性を救出するべく別々に捜査を開始したのだった。 奥さんと喧嘩中で、特命係の部屋に寝泊まりをしていた角田がすぐに捜査できたことも手伝って、絹は世間を震撼させた巨額詐欺事件の犯人で、最近出所したばかりだということが判明する。絹は歳を取ってはいるものの、詐欺師としての勘は衰えていないらしく、何やら根掘り葉掘り聞いてくる右京のことを警戒していたようだ。夜行バスの車内は、キレ者とキレ者がバチバチにやり合うヒリヒリとした空間となる。休憩のサービスエリアで亀山と連絡をとっている右京の目を盗んで鞄の中をあさり、彼の正体を突き止めた絹は、バスには戻らず、大型トラックの女性運転手に同乗させてもらい、その場から逃走した。おそらくそのバスの中で絹に尋問をしようと考えていた右京は、トラックに乗る絹の姿を見つけ珍しく「あ、」とポカンとした表情を見せていた。 だが、勝負はこれだけでは決まらない。亀山が見つけたアジトは、捜一が追いかけている連続強盗の犯人グループのものだった。でも亀山はすぐに伊丹(川原和久)には連絡せず、拉致された女性の身の安全の確保を第一に考えていた。それもひょんなことから居合わせた出雲(篠原ゆき子)が伊丹に連絡してしまい、大きくはない普通車内で「トリオ・ザ・捜一」と亀山がぎゅうぎゅうになっている様子はなんだかクスッと笑えてしまった。粘り強く、犯人グループが姿を現すのを待っていた亀山が、拉致された女性がグループの一味だということを突き止めた。つまり、これまで多くの人を騙してきたはずの絹はまさに今、騙されようとしていたのである。 右京と亀山、そして角田の協力によって真実が明らかになったことも素晴らしいが、「そろそろ踏み込んでよろしいでしょうか」「当たりめぇだ!」という伊丹と亀山のやりとりをきっかけにアジトに乗り込み、アクション映画のような華麗さで犯人グループを一網打尽にした亀山と「トリオ・ザ・捜一」もカッコよかった。今回はそれぞれの良さを生かした連携プレーが光る回となっていた。 絹はこれまで騙し取った金を弘前の父の墓の下に入れていたのだという。金にこだわる詐欺師は最後まで詐欺師。しかし、孫のために金が必要だと思った絹は老体を引っ張って夜行バスに乗った。もしかしたら最後の最後に人をつき動かすものは家族の愛なのかもしれない。
久保田ひかる