国を挙げて世界戦略!「タイ映画」にブームの予感 大ヒットコメディー「葬儀屋」 メジャー製作最新作「親友かよ」
【アジア映画の覚醒~コロナ禍からの反転攻勢~】 「ホンコン、韓国と続いたアジア映画の世界的ブーム。次はタイから来そうです」。3月に開催された「大阪アジアン映画祭」のプログラミング・ディレクター、暉峻創三さんはこう分析する。 同映画祭ではタイ映画特集が組まれ、インディーズ(芸術系)から大作まで計8本が上映され、層の厚さを見せつけた。 昨年、タイで公開されるや過去10年の記録をごぼう抜きする大ヒットとなったコメディー映画「葬儀屋」は特に大阪の会場を沸かせた。 「現代では見られなくなった地方の古い葬式の伝統、しきたりをこの映画で伝えることができれば」とティティ・シーヌアン監督。上映後の興奮冷めやらぬ満足げな観客の笑顔に自信を見せた。 監督やヒロインらキャスト計4人が来日。作品に懸ける意気込みを日本の映画ファンに伝えた。 「日本人にイサン地方の文化を知ってもらえてうれしい」とキャスト陣は強調。実は「セリフはタイの地方都市、イサンの方言。小規模上映からバンコクへと全国に人気が広がった稀有な作品です」とティティ監督は説明する。 近年のタイ映画の隆盛には綿密な仕掛けがあった。「国を挙げてタイ映画を世界へ浸透させるプロジェクトを進めています」と、政府が新設した「国家ソフトパワー戦略委員会」メンバーは説明し、「今回の大阪アジアン映画祭への出品は世界戦略の一環です」と続けた。 「葬儀屋」が地方から爆発的なヒットを生んだ一方、米アカデミー賞国際長編映画賞のタイ代表に選ばれた「親友かよ」はメジャー製作の最新作。 亡くなった級友を追悼する短編映画を同級生が作る青春もので劇中劇を展開させる構成は秀逸だ。ヒット作「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(2017年)を監督し、世界進出を果たしたナタウット・プーンピリアが今作ではプロデューサーを務めている。 新進のアッター・ヘムワディー監督は今作で長編デビュー。ナタウットに続く新たなタイのヒットメーカー誕生を予感させる。 (波多野康雅)