大学病院をやめてわかった…!患者のことを「小馬鹿にする」「見下す」医者がいる理由と「開業医の本音」
超高齢社会を迎え、ますます身近になってくる医者と患者。しかし、「長すぎる待ち時間」「冷たい医者の態度」など、医療に対する患者の不満や不信は尽きない。 【マンガを読む】オペ室看護師が見た、衝撃の「生死の現場」 悩んでいる患者を前にして、医者は何を考えているのか――。 いま話題の書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房刊)の著者で外科医の松永正訓氏が、知られざる「医者の本音」を明かす。
大学病院時代と開業医になってからの「違い」
医者と患者さんのコミュニケーションがどうあるべきか、私は大学病院にいた頃はあまり真剣に考えたことがありませんでした。大学病院で診る患者さんの数は、クリニックのそれとは比較にならないくらい少ないのが実態です。 ですから、そう多くない家族と濃密な人間関係を結んでいたので、コミュニケーションのあり方に特に疑問はありませんでした。 しかし開業医になってみると、本当にたくさんの患者家族と接します。長時間話し込むことは稀なので、人間関係の作り方にとても気を遣います。そうした中で、お互いの信頼関係をどう構築するか、大学病院時代とはまったく異なる次元で考えるようになりました。 よく「医者って患者を下に見ていないですか?」と質問を受けることがあります。医者と話しているとそういう印象を受けるそうです。 これはなかなか難しい問いかけです。うまく答えないと誤解を招きかねないと思います。でも、こういう質問は、ある意味で出てきて当然という気もします。
医者の態度は世代によって違う!?
医者にはいろいろな人がいて、中には自分のことを「お医者様」だと思ってふんぞり返っている人がいることも事実です。しかし、これは年齢が大きく関係します。 私は1961年生まれですが、世代的に私より15年くらい上(1945年くらいの生まれ)の医者は、本気で自分のことを「お医者様」だと思っています。幸いこの世代はもうさすがに引退なので、この世から「お医者様」は減っていくでしょう。 ちなみに私の長女は、幼少期に予防接種で近くの小児科へ行き、注射で泣いたところ、医者から「泣くな!」と怒鳴られて注射がトラウマになってしまいました。私はその話を妻から聞いて、本当に腹に据えかねましたが、ほどなくしてその小児科医院は廃業してしまいました。高齢だったのでしょう。 今は少し廃れましたが、一時期、患者さんのことを「患者様」と呼ぶ無言の圧力が医師の間で広がりました。これは2001年に厚生労働省が主導したと言われています。さすがにそれはやりすぎではないかという意見が徐々に勢いを増し、現在では「患者さん」になってきています。 私より15年くらい下の世代(1975年くらいの生まれ)は、「患者様」の呼称の中で育ちました。ですから、患者さんに対して大変丁寧です。 大学病院の教授先生も、かつては『白い巨塔』の王様でしたが、今では常識を弁えた(ある意味で)普通の人が務めています。これは大変いいことでしょう。