アイナ・ジ・エンド映画初出演&主演「キリエのうた」再編集した「路上のルカ」7・28放送
アイナ・ジ・エンドが映画に初出演&主演し、23年10月13日に公開された音楽映画「キリエのうた」が、ドラマ版として日本映画専門チャンネルで7月28日から独占放送されることが5日、決定した。 上映時間2時間58分と長尺の映画だったが、岩井俊二監督(61)が撮影終了後の初期編集版を基に、公開から1年弱を経て再編集を行った全10話、5時間半超えの拡大版となり、タイトルも「路上のルカ」と改題された。 「キリエのうた」は、宮城県仙台市出身の岩井監督が同県石巻、大阪、北海道・帯広、東京と、自身のゆかりある地を舞台に脚本も手がけた。東日本大震災を挟み、出逢いと別れを繰り返す4人の13年に及ぶ魂の救済を見つめた4つの地での物語が、時系列も入り乱れながら描かれた。 アイナは、歌うことでしか声が出せない路上ミュージシャンキリエこと路花と姉の希を演じた上に、主題歌「キリエ・憐れみの讃歌」含め、劇中歌6曲も書き下ろした。のSixTONES松村北斗(28)が潮見夏彦、広瀬すず(25)が路花と接点があった過去と広澤真緒里の名を捨て、歌手としてのキリエのマネジャーを買って出る女性イッコを、それぞれ演じた。 実は「キリエのうた」の撮影で使用された脚本は、時系列に沿って執筆されており、作品タイトルも異なるものだった。その脚本と撮影終了後の初期編集版を基に、岩井監督が再編集を行い「路上のルカ」を作り上げた。アイナ演じる主人公のキリエと松村演じる夏彦とのシーンや、映画本編ではカットされた楽曲「幻影」をキリエが歌唱するシーンなど、DVDの特典としても未収録・未公開の映像をふんだんに使用し、新たな視点と時系列で描かれる。 放送決定にあたり、岩井監督がコメントを発表した。 「『路上のルカ』は『キリエのうた』のそれぞれのエピソードをじっくりたっぷり描いていて、物語の向かって行く先は一緒でも、まるで違う体感、読後感の作品になりました。音楽も出来る限りロングサイズに編集しました。怒濤(どとう)のように駆け抜けたあの物語をミュージアム感覚でゆっくり堪能して頂けるかと思っております。是非、ご覧下さい!」 岩井監督は、96年の「スワロウテイル」でCHARA(56)、01年「リリイ・シュシュのすべて」でSalyu(43)を起用して音楽映画を作り、コラボした歌姫とともに時代を席巻してきた。「キリエのうた」で白羽の矢を立てた新たな歌姫こそ、脚本執筆中にオンラインで見たライブの歌声に衝撃を受け「この物語の主人公は彼女しかいない」と即、対面したアイナだった。 当時、アイナは6月に解散した“楽器を持たないパンクバンド”BiSHで活動していたが、岩井監督は「その頃、名前も知らない状態で、ウィキペディアで調べて知って作曲、振り付けまでやると…。現代の才気あふれるアーティストと仕事が出来る。単純に、その一点において、僕の心は大はしゃぎだった」とオファーした当時を振り返っていた。 ただ、BiSHの活動の合間に「深夜にギターを奏でながら…途中で心折れそうになりながら」(岩井監督)劇中歌の書き下ろしというハードな状況に、アイナから「私じゃなくてもいいと思うんですけど…」と弱音も出たという。それでも、岩井監督から「最後までゆっくり行きましょうと」と声をかけられ、背中を押され、映画初出演&主演にもかかわらず、一人二役を、しかも座長として背負い、作り上げた。 2023年10月14日に都内でお粉わら公開記念舞台あいさつの際、岩井監督は「撮影が始まって、演技をするのは初めてという女の子に2人の役、姉と妹と作詞・作曲…いろいろなものを背負わせてしまって、あまり言わなかったですけど…大変なことをお願いとヒヤヒヤした」と、アイナに“公開謝罪”した。その上で「キリエと路花が誕生し…アイナ・ジ・エンドが作った、純度100%の作品だと思います」とたたえた。 ◆「路上のルカ」 大阪で放浪生活を送っていた少女・ルカ(アイナ・ジ・エンド)は小学校教師のフミ(黒木華)に保護される。成長したルカは姉の恋人だった夏彦(松村北斗)と北海道帯広で過ごし、女子高生マオリ(広瀬すず)との友情を育むが、彼女を待ち受ける運命は常に過酷であった。東京にたどり着いたルカはミュージシャンとなり“キリエ”と名乗り路上で歌い始める。そこで再会したマオリは“イッコ”と名乗り、変幻自在なコスプレと男性関係で東京を生き抜いていた。