芥川賞作家が語る読書の魅力とは? 佐藤厚志さんが亘理でトーク 「新しい世界広がった」
亘理町が舞台の小説「荒地の家族」で芥川賞を受賞した仙台市在住の作家佐藤厚志さん(42)が、同町役場で講演し、「本とわたし」をテーマに読書の魅力について語った。 亘理は祖父の出身地で、先祖の墓が残っているという佐藤さん。亘理を舞台にした作品が複数ある理由について「自分は仙台生まれだけど、亘理を身近に感じながら、外から亘理を見ていた。小説を書くにはちょうど良い距離感だった」と説明した。 幼少期は「体を動かして遊ぶのが好きだった」という佐藤さんが本に親しむようになったのは中学生の時。図書室に本の返却に向かう友人に仕方なく付き添ったエピソードを披露した。 「『十五少年漂流記』『宝島』『秘密の花園』などを勧められて読んだら面白かった。その頃は映画と漫画が(娯楽の)一番と思っていたが、小説という新しい世界が広がった」と振り返る。 執筆活動の今後にも触れた。「(現代より以前となる)昔のことは書いたことがない。祖父や父親の時代を小説にするのも面白いかもしれない」と抱負を口にした。 講演は対談形式で進行。聞き手を務めた仙台市の出版社荒蝦夷(あらえみし)代表で作家の土方正志さん(61)は「地域に住む人の気持ちを代弁してくれる地元の作家の存在は大きな財産。その作家を支え、守り育てるのは地域の読者の皆さん」と述べ、講演を結んだ。 町図書館が開館30周年を記念して主催。講演は6月29日にあり、約180人が来場した。
河北新報