「日本人には用がないキー」誤って押してイライラ…Caps LockはなぜAの隣にあるのか?
邪魔だ。WindowsパソコンのキーボードのCaps Lock(キャプスロック)キーは、どうしてAの隣にあるのか? 日本語入力(ローマ字入力)で最も使うであろうAの隣にあるため、文書作成中に誤ってCaps Lockを押してしまうことが度々ある。その途端、表示される文字が英小文字に切り替わり、直そうと思ってとっさに「半角/全角」を打っても戻らず、いろいろなキーを打っているうちに英大文字や「かな入力」になってイライラする。 【写真】「Windows95」の登場で駆逐された、AのそばにCtrlがあるキーボード。小指が届きやすそう…! Caps Lockには、英字入力を維持する機能がある。Shift+Caps Lockで英大文字、英小文字の入力を切り替えられる。ただ、日本語入力時に英小文字を使うときは「半角/全角」を押すし、英大文字はShift+で事足りる。Caps Lockよ、はっきり言って君は使わないんだ。 Aの隣にいてほしいのはCtrl(コントロール)キーだ。切り取り、コピー、貼り付け、全選択…。「Ctrl+」によるショートカット機能は文書作成でよく使うため、Aの隣にあった方が便利だ。しかし、Ctrlはキーボードの左下に追いやられ、小指で押しづらい。 ちなみに、AppleのMacのキーボード(日本語版)は、Aの隣にCtrlがある。では、なぜWindowsパソコンのキーボードではAの隣がCaps Lockなのか。その理由を調べてみると、パソコンの歴史や需要が深く関わっていることが分かった。
英語版を基に日本語版を開発
「英文字を打たない日本人には用がないキー」。京都大学人文科学研究所附属人文情報学創新センターの安岡孝一教授(58)=人文情報学=は、Caps Lockについてそう話す。そんな用のないキーが、どうしてAの隣という重要な場所に居座っているのか。安岡教授が指摘したのは、IBMが日本市場向けに開発した「106キーボード」の存在だ。 106キーボードは、米国などで使われていた101キーボードの配列に「かな」を刻印し、「カタカナ/ひらがな」「変換」など5つのキーを追加したデザイン。英字入力で使用頻度が高かったCaps Lockは、タイプライター時代からの流れを受けて101キーボードでAの隣に鎮座しており、106キーボードでもその位置は変わらなかった。 IBMが106キーボードを引っ提げて日本での浸透を図った1990年代の初め、日本のパソコン市場はNECのPC‐9800シリーズが席巻していた。この牙城を崩すためにIBMは、ソニーや東芝、シャープといったNEC以外のメーカーに声をかけ、IBMが開発したパソコンの互換機普及団体「PCオープン・アーキテクチャー推進協議会(OADG)」を1991年に発足させる。この際、それまでバラバラのデザインのキーボードを使っていたOADG加盟各社は、106キーボードを標準規格にしてキーの配列を統一した。