大阪の地下鉄民営化基本方針案の争点「今里筋線」とは?
延伸予定区間にバス輸送システム(BRT)社会実験
そんな今里筋線ですが、民営化を反対していた自民党市議団が市営地下鉄民営化基本方針案の賛成条件として示されていた12の項目のうち、大阪市の吉村洋文市長は11の項目を受け入れました。 唯一、今里筋線・未着工区間の整備基金創設については「赤字が増える」と拒否していましたが、代わりに延伸予定区間にバス輸送システム(BRT)社会実験などの費用を盛り込むなどし、自民党市議団はそれを評価、基本方針案に賛成する公算となりました。 地下鉄が民営化されれば、赤字が必至の今里筋線延伸は事実上不可能になることから、それまでに沿線地域の交通サービスを拡充したいという自民党の主張に対し、市側が代替案を示した形です。 市議会(定数:86)では今後、この修正案を基に議論が行われます。基本方針案は議会の過半数で可決されるため、大阪維新の会(36人)と自民党に次ぐ第3会派の公明党(19人)が賛成した際には成立する見通しです。ただ、民営化を行うためには市営地下鉄の廃止条例案の可決に3分の2以上(58人)の賛成が必要とされているため、自民党(20人)の賛成がポイントとなります。
延伸工事には2千億円規模の工事費がかかるとも言われています。地下鉄以外にも前述のBRTなど、移動を便利にする方法はいくつかあり、今後はこれらをうまく組み合わせながら、今里筋線の延伸ありきではなく、費用や利便性の面でより良い方法を考えることが求められます。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。