台湾新総統「中台の現状維持」 頼氏が就任、中国に対話呼びかけ
【台北・後藤希、北京・伊藤完司】1月の台湾総統選で当選した民主進歩党(民進党)の頼清徳主席(64)が20日、総統に就任して新政権が発足した。頼氏は就任式で「傲慢(ごうまん)にも卑屈にもならず、中台関係の現状を維持する」と述べ、統一も独立も求めない蔡英文前政権の路線を継承する考えを示した。民進党政権を「独立派」と敵視する中国が圧力を強める中、日米をはじめとした民主主義国家と連携して対処する姿勢を強調した。 【写真】就任式典で手を振る台湾の頼清徳新総統とポーズをとる蕭美琴新副総統 蔡氏は、2期8年にわたって総統を務めた。1996年に総統の直接選挙が始まって以降、同一政党が3期連続で政権を担うのは初めて。新副総統には、神戸市生まれで前台北駐米経済文化代表処代表(駐米大使に相当)を務めた蕭美琴氏が就任した。 頼氏は演説で「中台は互いに隷属しない」と訴え、中台を不可分の領土とする「一つの中国」原則を受け入れない考えを表明。その上で中国に対し「言論や武力での威嚇を停止し、共に台湾海峡の平和の維持に尽力するよう求める」と対等な立場での対話を呼びかけた。 これに対し、台湾統一を掲げる中国は反発を強めている。台湾政策を主管する国務院(政府)台湾事務弁公室官は20日、「いかなる分離独立行為も容赦しない」との談話を発表。中国外務省の報道官も同日の記者会見で「台湾独立は破滅への道だ。必ず失敗する」と警告した。 一方、民進党は1月の立法委員(国会議員)選で少数与党に転落しており、対中融和路線の野党、国民党が第1党となる。ねじれ議会となった立法院(国会)では与野党対立が激化しており、頼氏は「競争だけでなく、協力の信念を持つべきだ」と野党側に協力を求めた。 日本からは台湾との関係を重視する超党派の議員連盟「日華議員懇談会」のメンバー約30人が就任式に出席した。
西日本新聞