人工シラスウナギの大量生産「商業化の道筋見えてきた」…生産コスト1匹4万円から1800円に下げる
国立研究開発法人「水産研究・教育機構」は4日、ニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)を人工的に大量生産する実証事業の成果を発表した。飼料や水槽を新たに開発するなどし、1匹あたりの生産コストを約1800円に下げた。天然物の取引価格の3倍程度の水準だが、事業を委託した水産庁は「商業化の道筋が見えてきた」としている。 【写真】「白いダイヤ」とも呼ばれるシラスウナギ
養殖に必要な稚魚は天然資源に依存しているが、生態には謎が多く、近年の国内採捕量は10トン前後と低迷している。機構の前身機関が2010年、人工的に採取した卵から成魚を育てて産卵させ、さらに世代を重ねる「完全養殖」に成功したものの、卵からシラスウナギに育てるのが難しいとされてきた。
発表によると、孵化(ふか)した後の健全なウナギを増やす技術を開発し、鶏卵などを使った新たな飼料で成長を促すことにも成功した。大型の水槽や自動給餌システムも開発して生産効率を高めたという。
取り組みの結果、16年度はシラスウナギ1匹あたり4万円超だった生産コストが1821円まで低下。天然シラスウナギの取引価格(500~600円程度)に比べるとまだ高いが、水産庁は生産規模拡大に向けて地方自治体や民間企業に量産技術を移転するなどし、1000円以下のコスト実現を目指す。