福島県の地滑り防止対策 53施設 機能低下 2000カ所点検
福島県が整備した地滑り防止施設のうち、53施設が損傷して機能が低下していることが分かった。国が新たに設けた4段階の健全度評価方式を受け、全約2千カ所を点検し、初めて結果をまとめた。県は順次、対策工事を進める方針。今年度は1988(昭和63)年に大規模な地滑りが発生したいわき市好間町で対策工事に着手する。豪雨が多発している中、いかに予算を確保して工事を早急に進めるかが課題となる。 点検は県内の治山施設を含む2036施設を対象に2017(平成29)年度から昨年度末までの7年間にわたり実施した。県はこれまで定期的に全施設を巡回して点検し、必要に応じて補修工事をしてきた。 しかし危険箇所の見逃しを防ぐため、国が地下水をくみ上げて外に排水するための集水井戸での目詰まりの有無、土留めする杭(くい)の腐食状況などを詳細に調査し、健全度を把握するよう求めた。 評価結果は【表】の通り。対策工事の緊急度が最も高い「損傷があり、機能が低下している」の方部別の内訳は、いわきが最も多く16施設、次いで県北が11施設だった。県は直ちに地滑りの被害を生じさせる可能性は低いとみている。
地滑り防止施設の一般的な構造は【イメージ】の通りで、整備してから30~40年が経過している施設が県内に数多くあり、老朽化が懸念されている。健全度で「損傷があり、機能が低下している」と評価された53施設から優先的に対策工事に乗り出す。 今年度に予定しているいわき市好間町の工事では、県は調査・設計費950万円を計上した。対策工事の総事業費は6千万円程度となる見通し。国の農山漁村地域整備交付金を活用し、県が2分の1を負担する。設計などを実施後に集水井戸の洗浄などをする計画。 県は評価結果の精査を進め、来年度以降に対策する施設を決める。今後は5年ごとに評価を更新する方針。 来年度以降の対策工事にも膨大な予算が必要となる一方、確保の見通しは不透明となっている。担当者は「限られた予算の中で効果的な対策工事を実施していきたい」としている。 県災害対策課がホームページで公表している「県内における主要災害」によると、1989年から2022(令和4)年までの間、大規模地滑りは県内で6件発生している。
※地滑り 地下水の影響などを受け緩やかな斜面が動く現象。広範囲の土の塊がゆっくりと動き、人家や道路、田畑などに甚大な被害を与える。川をせき止めて洪水を引き起こすケースもある。崖崩れは急斜面で突発的に土砂が崩れ落ちる現象。