【インタビュー】カメラとAIに常時モニタリングされる町 「コンコルディア」ショーランナーが衝撃の舞台設定を語る
中島健人が海外ドラマデビューを果たすHuluオリジナルの大型国際ドラマ「コンコルディア Concordia」が、11月8日から独占配信される。このほど映画.comは、「ゲーム・オブ・スローンズ」「THE SWARM ザ・スウォーム」などで知られ、制作総指揮を担うフランク・ドルジャーにインタビューを敢行。AIによるモニタリングとデータ収集で、20年にわたり完璧な調和が保たれているコミュニティ「コンコルディア」という衝撃の舞台設定や、AIをめぐる是非を観客に問いかけるスリリングな物語について、話を聞いた。(取材・文/編集部) 【フォトギャラリー】中島健人の姿をおさめた「コンコルディア」場面写真13点 舞台は、カメラと AI に生活の全てをモニタリングされたコミュニティ「コンコルディア」。社会と住民の健全さを守るためのデータ管理は、鉄壁のセキュリティを誇っていたが、ある日、起こるはずのない殺人事件が発生。未然に犯罪を防ぐはずのAIは、何を見逃したのか――? 殺されたのは、コンコルディアの分析官オリヴァー。やがて彼は、自身の立場を利用して、第三者の情報を不正閲覧していたことが明らかになる。町の理念と価値観を揺るがす事態に、人々は翻ろうされていく。 ――コンコルディアという町や物語の着想について、教えてください。ドルジャーさんは、「このドラマでは“監視”と“AIの使用”について深掘りする必要があるということに行き着きました」とおっしゃっていますね。 オリジナルのアイデアの始まりは、歴史的にも、労働者が健康でいられる調和したユートピア、コミュニティのようなものが求められたり、実験的に作られたりした時代があって、「それの21世紀版って、どんなものだろう?」と考えたことです。同時に、病院で仕事をしている友人から、いかに医療のAI面での進化が目覚ましいかという話を聞いたんです。肉体にデバイスを埋め込んで、健康状態をモニタリングするという話も聞きました。 世の中には年を重ねて、友情が破綻して、身体的な影響もあって、孤独を感じる方もたくさんいらっしゃる。ですからコミュニティを作る場合は、物理的な部分だけではなく、メンタルヘルス的な部分もケアしなければいけないんだろうなと。環境的にも、持続型のものでなければならないと考えました。 ――コンコルディアという町や本部の、ビジュアル面でのこだわりはありますか。 面白いのは、監視やAIというお話をすると、皆さん、ディストピアを想像してしまうんですよね。ですから今回はあえて、逆にいきました。町のビジュアルを見ていただくと、光が溢れ、壁のない部屋が多く、ガラスが多く使われている。いわゆる透明性を表現したデザインになっています。つまり住民が隠すものがなければ、何も恐れることはない――それがコンコルディアのコンセプトなんです。AIはきっとそういう町を作るだろうというビジョンで、イメージを固めていきました。 システムや社会がどんなに素晴らしくデザインされていたとしても、邪悪なものを完全にシャットアウトすることは不可能なんです。本作でもある事件が起き、物語にスリラー的な側面が加わります。ですが、この事件は、コンコルディア自体がいけないということではなく、過去に起きた事件に関わっているという部分を強調して描こうとしました。 ――近未来を描く作品では、「実際にこんな町ができたら、世界はどうなる? 生活はどうなる?」というシミュレーションの解像度も重要かと思います。特に、コンコルディアに関しては、世界を席巻しつつあるAIをテーマにしており、真に迫ったリアリティがあります。「コンコルディア」でできることや、そのレベル感をどのように設定したのか、教えてください。 脚本を書いている段階で、ひとつ気付いたことがありました。脚本を1本書き上げ改稿すると、2カ月ほどが経っていて、その間に技術が進歩してしまっていたりする。だから、私たちが脚本に書く技術というのは、絶対にいまある技術には追いつけないんだと。コンコルディアは、未来というよりも、2024年に作られたような、いまある技術で実現可能な町。コンコルディアで使われている技術の一部は、いまの世界で進められている、叶えられている、我々がアクセスできるレベルのテクノロジーを想定しました。 個人的に、未来の世界を描くときに多いケースだなと思っているのが、過去に存在していた場所や町を描かずに、全く新しい社会を見せること。ですが本作では、それまでに作られた社会や建築物に背を向けることなく、再構築するような。新しいものと古いものを共存させ、コミュニティのなかで見せることに、こだわりました。つまり、ファンタジーにはせず、今日アクセスできるテクノロジーのレベルで、私たちが住むことが叶うようなコミュニティにしたんです。 ――住民たちが「カメラやAIによるモニタリングを受け入れるというレベルを超え、むしろ歓迎している」という点も斬新です。本編の冒頭に必ず、住民たちがコンコルディアの魅力を語る、町のPRムービー風映像が挿入されることも特徴的ですが、どのような狙いをもって、この描写をされたのでしょうか。 そもそも私たちは常に、カメラで撮影されているんです。ホテルでチェックインする時も、駅を歩いている時も。そして私たちもそれに慣れ切ってしまっている。コンコルディアの場合は、映像を常に見ている人は誰もいないことが、カギなんです。カメラは撮影をしているんだけれど、何かが起きた時のみアラームが鳴って、誰かがチェックしに行くというシステム。そして、スマホやネットの履歴にはアクセスできないようになっている。だから皮肉にも、もしかしたらプライバシーに関しては、私たちが暮らしている世界より、コンコルディアの方が安全かもしれません。 最初の住民たちのインタビュー映像ですが、本編はあまり説明過多にしたくなかったんです。町の魅力をさまざまな方に語ってもらうシーンを入れることで、映像で説明し過ぎることなく、視聴者が町を目撃できるようにしました。 あのシークエンスで、僕が面白いなと思ったのは、皆が、自分がコミュニティの一員だと意識していることです。最初にコミュニティの大切さをお伝えしましたが……メリットがたくさんあるコンコルディアでは、住民たち皆が力を合わせて事件を解決しよういう考え方をもっているんです。視聴者に対しては、システムはどこかうまくいかないけれど、何かが起きた時に誠実に、正直に修復に当たれば、信頼も生まれるということが伝われば良いなと思いました。 Huluオリジナル「コンコルディア Concordia」(全6話)は、11月8日からHuluで独占配信開始。毎週金曜に、新エピソードが更新される。