「組長が直々にヒットマンに!?」 被告は全面否認も厳罰求刑の裁判の行方
検察側が立証の突破口としたのが、神戸市内の中田組長の自宅や現場周辺、そしてその間の経路の防犯カメラ映像だったようだ。 「検察官は300点以上の防犯カメラ画像を法廷で投影しました。中には、現場周辺を走るタクシーのドライブレコーダーの映像もあって、執念でかき集めたんでしょうね。弘道会が撮っていた襲撃の模様の動画も法廷で流れて、運転席にいた被害者に、バイクに跨(またが)ったままフルフェイスのヒットマンが至近距離から白煙を上げて銃撃した様子も流れました。 6発撃って5発が命中したそうです。検察側は被害者の容態も説明していたんですが、右腕を切断したそうです。出血もおびただしかったようで、『搬送が遅れていれば失血性ショックで死亡していた可能性があった』という医師の証言も読み上げられていました」(前出司法記者) 検察側が特に力を入れるのが、いわくつきの場所の映像だという。 「事件発生前に中田組長の自宅から出た車両をリレー形式でたどると、JR新神戸駅前の商業ビルに入り、ビル内を歩く様子がうかがえるというんですね。その車両に乗って、ビル内を歩く人物は帽子を目深にかぶっていて顔つきは判別しにくいんですけど、服装がヒットマンと酷似しているので、これが中田組長だという主張です。 この映像と事件の関連性が、公判の焦点となるでしょう。それで、このビルは、1997年の宅見勝若頭の射殺事件が起きた現場なんです。歴史の因縁を感じます。証拠に関しては、検察側はこの他にも、中田組長が逮捕時に、六代目側の主要幹部の関係先を記したメモを持っていたと明かしています。こうした間接証拠の積み重ねで、有罪へともっていきたいのでしょう。 対する中田組長は、黙秘権を行使して被告人質問に答えていません。公判中は厳しい表情を崩さない中田組長ですが、閉廷時に裁判長が『中田さん、長い事件お疲れ様でした』と声を掛けられると、『あー、いやー』と相好を崩したのが印象的でした」(前出司法記者) 10月15日の論告求刑公判では、検察側は「拳銃を事前に準備し、下見をしたうえで敢行された計画的犯行」だとして懲役20年を求刑。一方、中田被告の弁護人は「目撃証言や指紋など客観的な証拠がない」などとして無罪を主張している。 判決は10月31日に言い渡される予定だが、中田組長と検察の両者の徹底抗戦ぶりを見ると、地裁判決がどのようなものであっても、控訴は必至の情勢だ。 文/大木健一 写真/安西良美