会社のお金で「1300万円超」高級バッグやアクセサリー“爆買い”に裁判所の判断は… 不正がバレた女性社員の“末路”
こんにちは。弁護士の林 孝匡です。 しめて1322万円。 これは、女性社員が会社のお金で高級アクセサリーや高級バッグを買いあさった金額です。交通費も95万円を詐取していました。そんな最近の事件をお届けします。(モルビド事件:大阪地裁 R5.9.29) ※ 争いを簡略化した上で本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換しています
登場人物
▼ 会社 ・テレビ、雑誌などの宣伝広告の企画や制作をする会社 ・具体的な業務内容はTV番組に出演するタレントの手配など ▼ Xさん(女性・昭和56年生まれ) ・平成17年 アルバイトとして入社 ・平成18年 正社員となる ・営業を担当。具体的には広告やイベントなどの案件の受注、撮影現場へ立会いなど
事件の概要
ーー いつ頃から「おかしいな~」と感じ始めたんですか? 会社代表者 「平成27年頃からです。Xさんの勤務態度が悪くなり、業務に関する申告にオカシイ点があると感じるようになりました」 会社に納品された商品の明細と、取引先から会社への請求金額がオカシイ...と感じたんです。「こいつ、会社に必要ないものを買って会社に支払わせてるんじゃないか」という疑惑ですね。 ▼ 面談 会社代表者がXさんと面談します。会社の弁護士も同席しました。代表者はXさんに対して「不正行為があったのでは?」と聞きましたが、Xさんは不正行為を認めませんでした。 ▼ 懲戒解雇 その後、Xさんは不正の一部を認めたのでしょう。約4か月後、会社はXさんを懲戒解雇します。 通知書には「貴女自身がお認めになっている通り、今般、貴女が行った金銭に関するさまざまな不正行為により、当社が多額の損害を被っていたことが発覚致しました。(以下略)」との記載がありました。 会社は、Xさんに対して損害賠償請求訴訟を提起しました。
ジャッジ
裁判所 「Xさんは会社に合計1417万円払え」 「内訳は、高級アクセサリーなどの購入費1322万円と交通費詐取95万円です」 ▼ 会社のお金で自分の物を買いまくる 約1322万円も買いまくってます。完全に自分の物を買ってるのに、Xさんは「キャスティングに必要な費用」などとして会社に支払わせていたんです。 ーー どんな商品を買ってましたか? 裁判所 「あるブティックでは高価なアクセサリーを買ってますね(ダイヤネックレス19万8000円、ハートダイヤリング39万円、ダイヤピアス6万8000円、ダイヤチェーンブレス23万8000円、ダイヤクロスNC29万円)。そのほか、スカート、ジャケット、リングサイズのお直しもしてます」 ーー おいおい。リング直してんじゃねーよ...。あとは? 裁判所 「別のところからは高級バッグも買ってます(鍵付きバッグ12万円、スーツケース(大)8万5800円、スーツケース(小)6万9300円、リュック20万9000円)」 ーー まだあります? 裁判所 「ベビータオル、クッション、ダストボックス、ソファーなどですね」 Xさん 「ちょっと待ってください。買ったことは認めますけど、不測の事態が生じて撮影できなくなることを避けるため、あらかじめ衣料品などを買っていました。予算の範囲内で。代表者から指示があったので。あと、使用済みの衣類などは、多くの場合は再利用することがなく保管場所もないため処分しています。なので会社は黙示的に所有権を放棄しており、従業員などの自由な処分に委ねています」 裁判所 「シャラップ! 非常識だね。キャスティング業を行う営利企業が、必要になるか分からない衣料品をあらかじめ準備し、しかも、使用済みのものを売却することなく処分するっていうのは常識的に考え難い!」 一蹴されております。あと、別のところからも、257万円、237万円の購入が認定されています。Xさんは訴訟前のメールでも自爆しています。 「●さんの個人口座請求分は~、私に入っており、モデルや●さんには入っていません」と送って自認しているんです。 1回成功したので、ズルズルと沼にハマりこんだのでしょうね。合掌。ていうか20万円のリュックって何や! ▼ 交通費を多めにもらう(95万円) あと、交通費も詐取しています。引っ越したのに、引っ越し前の住所からの交通費をもらい続けていました。本来もらえる金額よりも多く詐取していたんです。その金額、95万円。
ほかの裁判例
Xさんは懲戒解雇になってますけど、まぁそりゃそうでしょう。あと、以下の悪行を働いて解雇OKになった事件もあります。詳しくは関連記事をご覧ください。 今回は以上です。これからも労働関係の知恵をお届けします。またお会いしましょう!
林 孝匡(弁護士)