BTS「常に劣等感にさいなまれた」先の見えない“黎明期”の心境が伝わってくる『BTS Monuments: Beyond The Star』
BTS(防弾少年団)の10年間の軌跡を収録したドキュメンタリーシリーズ「BTS Monuments: Beyond The Star」(毎週水曜2話ずつ配信)の第1話、第2話が、12月20日に配信された。同作は、2013年6月13日にシングル「NO MORE DREAM」でデビューする以前からの映像が収められ、RM、JIN、SUGA、J-HOPE、JIMIN、V、JUNG KOOKの7人が新たなインタビューで当時の状況を振り返っている。初回に配信された第1話「始まり」と第2話「青春」は、それぞれわずか30分強であるにもかかわらず、涙なしには語れないエピソードが満載だった。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】カッコイイだけじゃない!かわいらしさも同居した世界的スーパースターたち ■ダンスレッスンに疲弊する“BTS黎明期”からスタート 第1話では、各地からソウルに集まった7人がBTSというチームでつながるまでの過程が描かれている。生みの親であるパン・シヒョクPDが練習生時代のメンバーの印象を語ったかと思うと、動きがそろっていないという理由で繰り返しダンスを止められ、危機迫る表情を見せるメンバーも映る。それはまさにBTSの黎明期で、SUGAが「食事と寝る時間以外はいた」という天井の低いレッスン室で必死に「NO MORE DREAM」のダンスに打ち込む姿はまだ幼く、疲弊した様子はなんとも痛々しい。 当時はまだ小さな事務所だったこともあり、資金も潤沢ではなく、いつデビューできるのか分からないまま、彼らは練習に打ち込んでいた。そういった事情もあり、デビュー後の2013年10月のRM、JIMIN、JUNG KOOKの合同誕生日会では、全員が涙ながらにファンに感謝を述べるなど、当時のメンバーの心理状態がこと細かに伝わってくる。さらには年末の「Melon Music Awards(MMA)」で新人賞を受賞するも、事務所の力がモノを言う韓国では活動内容が「大きく変わることはなく」(JIN)、むしろ「大手事務所と比べられ続けて、常に劣等感にさいなまれた」(RM)と当時の心境を吐露している。 ■冷遇されていたデビュー当初の裏側も告白 BTSの10周年記念本「BEYOND THE STORY」(新潮社刊)の著者であるカン・ミョンソク氏も語る通り、彼らがいかに恵まれない状態からスタートしたのかがつづられていく。ダンスレッスンでボロボロになり、ヒップホップ技術を高めるために訪れたアメリカでも作詞や作曲に頭を悩ませる。彼らの楽曲にもあるように、BTSの道のりは「血、汗、涙」の上に成り立っていることが痛いほどに伝わってくる。 その後、BTSは苦悩の末に「I NEED U」「RUN」「FIRE」とヒット曲を生み出し、韓国国内での地位を確立していくが、アイドルという立場に否定的な人々が彼らの存在を批判し続ける。新曲を発表するたびにチャートインしても、否定され続ける現実。そんな茨の道を歩むことになったBTSは、楽曲により率直な気持ちを込めていく。 ■世界で活躍も過密スケジュールが心を蝕む 第2話では、いかにしてBTSとファンが強い絆で結ばれ、確固たる共同体となり得ていったのかも映し出されている。その絆は海を越え、彼らを応援する人々は各大陸で増えていく。そして、2017年の「ビルボード・ミュージック・アワード」「アメリカン・ミュージック・アワード」で受賞するまでになり、記憶だけでなく、世界的な記録にも残る存在になったことも描かれる。だが、光れば光るほど、影は強まる。心身共に疲弊させる山積みのスケジュールと、有名になればなるほど強まるプレッシャー。当時を振り返るメンバーたちの冷静なコメントが映像に深みを与える。 栄光の裏に刻まれた彼らの努力と我慢の道のりは、まだ始まったばかり。SUGAも話している通り、彼らは他の人が20年かかるであろう道のりを6~7年で一気に駆け抜けてしまった。そのため、とても30分強とは思えないほどの情報量が詰め込まれており、わずか2話でも見応え十分だ。 BTSは人々に与えた影響の強さから、“ビートルズの再来”と言われたこともあったが、そんな彼らの奥深くのところにあるものはどんなものなのか? そこまで触れることができそうな極上のドキュメンタリーとなっている。 「BTS Monuments: Beyond The Star」は、毎週水曜2話ずつ最新エピソードをディズニープラスで独占配信中(全8話)。 ◆文=及川静