愛される伝統のくじ駄菓子「あん玉」 青森の企業、12月から販売再開
青森市近郊で古くから親しまれてきたくじ付きの駄菓子「あん玉」。市内で唯一通年で作ってきた和菓子メーカーが今年4月に倒産し、店先にない状態が続いていたが、県内のショッピングセンターなどで「だがし屋」5店舗を展開する「フレックスコーポレーション」(同市)がレシピを受け継ぎ今月から販売を再開した。社長の加川雄飛さん(43)は「あん玉はなくしてはいけない地域特有の駄菓子文化。昔ながらの味を楽しんで」と話す。 直径2センチほどのあんこの玉を二つに割り、赤や青、黄色など色付きのあんこが入っていたら当たり。景品として、カラフルでもっと大きなあんこ菓子がもらえる。かつては市内の多くの駄菓子店にあったが、時代とともに製造業者が減っていった。 1997年創業の同社があん玉を復活させるのはこれが2度目だ。最初は、2014年に仕入れ先が廃業したため、加川さんの母で当時社長を務めていた澄子さんがレシピを継承。市内の和菓子メーカーに製造を委託し16年に販売再開にこぎ着けた。しかし、その業者が今回倒産してしまった。 再び訪れた危機に、加川さんは複数の和菓子製造業者に声をかけた。「あん玉は一つ一つ手作業で丸めるため手間がかかる。今はどこも人手不足。断られ続けた。復活が難しいことは分かっていたが…」と振り返る。 そんな中で名乗りを上げたのが、倒産した業者と長年取引のあったかまぼこ製造の「丸髙 髙橋蒲鉾(かまぼこ)店」(同市)だ。社長の髙橋真史さん(49)は「あん玉は小さい頃に食べていた。長く親しまれてきた味を残し地元に貢献したかった」と話す。30年以上かまぼこを作る工場長の齊藤立さん(60)は「あん玉とかまぼこは材料は違うが機械や作り方が共通している。和菓子作りは初めてだが職人の血が騒いだ」と語った。半年近く試行錯誤を重ね、上品な甘さで口溶けの良いあん玉に仕上げた。 初めて店先に並べたのは今月8日。引き合いは家族が集まる年末年始に集中しそうだという。加川さんは「あん玉は人と人をつなぐコミュニケーションツールにもなり得る。全国に胸を張れる駄菓子になってくれたら」と笑顔を見せた。 あん玉はだがし屋の本店(同市第二問屋町)とサンロード青森店(同市緑)で販売。弘前、つがる市の店舗は予約が必要。箱売り16個入り2690円、32個入り4690円(いずれも税込み)。