自宅は半壊、でも… 星稜のサックス奏者、最後の演奏 センバツ
第96回選抜高校野球大会は30日、準決勝2試合があり、星稜(石川)は健大高崎(群馬)に4―5で逆転負けした。吹奏楽部員としてアルプススタンドから選手たちに応援演奏した竹沢愛(まな)さん(3年)は、能登半島地震で石川県七尾市の自宅が被災。家族を支えるため、センバツでの演奏を最後に部を引退する。チームは敗れたが「甲子園で準決勝まで4回も演奏できて楽しかった」と充実した表情を見せた。 【写真で見る】星稜vs健大高崎(準決勝) 元日の夕方、竹沢さんは自宅で被災した。「買い物から帰ってきたら、大きな揺れが来た」といい、自宅は壁や窓が壊れるなど半壊状態になった。いつ崩れるかわからない自宅には住めず、家族とともに避難所に移った。2週間後、竹沢さんは通学のため金沢市の親戚の家に移り住んだ。「家族と離れるのは寂しかった」が、学校の友人や部の仲間が気遣ってくれたことが心の支えになった。 星稜のセンバツ出場を受け、竹沢さんら吹奏楽部は甲子園で応援することに。一方で避難所に残った家族は4月1日に七尾市内の仮設住宅へ移り、自宅は解体して建て直すことになった。吹奏楽部の3年生は例年、5月の演奏会を区切りとするが「いろんな負担がある家族の生活を少しでも手伝いたい」とセンバツに前倒しすることを決めた。 野球部が負ければ自身が引退となる大会で、星稜ナインは快進撃を見せた。竹沢さんは1回戦からアルトサックス奏者として選手たちを後押しし、この日も定番曲の「星稜コンバット」などでスタンドを盛り上げた。 試合後、竹沢さんは「甲子園に連れてきてもらい、ここまで演奏できてうれしかった。野球部の試合も素晴らしい内容でした」と話した。【野原寛史】