新広島駅ビルが生む活気 広島市の的場町一帯に飲食店やホテル相次ぎ進出
JR広島駅南側にある広島市南区的場町で、飲食店やホテルの進出が相次いでいる。各店は、新しい駅ビルが2025年3月24日に開業するのを見据え、集客の追い風を期待する。戦後に繊維問屋街として栄えたエリアは徐々に姿を変え、新たな活気が生まれつつある。 【写真と地図】変わりゆく的場町 串焼き、創作おでん、タイ料理と、多彩な店が軒を連ねる飲食店街。その一角に8月、料理の持ち帰りや宅配に特化したシェア型施設「ホーミーズキッチン」が開業した。2階建てビルの壁面には「Shared Cloud Kitchen」の大きな文字。複数の飲食店が集まって施設を共有し、料理を提供することを意味する。 ビルには最大7店が入居でき、現在はクレープ店とすし店が入る。近くのオフィスや専門学校のニーズを見込む。施設を運営するホーミー(呉市)の小南慶次郎社長は「横丁みたいな雰囲気のある落ち着いた町。広島駅前の再開発で人が集まるようになる」と駅ビル効果を見込む。 ホーミーズキッチンの近くでは10月9日、広島牛専門の焼肉店「広島牛焼肉青ひげ」がオープンした。店を運営する青ひげ(中区)は、新しい駅ビルの商業施設ミナモアにも弁当や総菜の持ち帰り店を出す。焼肉店では、ミナモアの新店向けの商品も作る。 谷太輔社長は「駅と広島のまちなかの間にある便利な場所。焼き肉や弁当、総菜の調理を集約して効率を良くする」と話す。 的場町一帯は戦後、繊維問屋街で中四国最大の規模を誇った。1878(明治11)年創業で、戦後から的場町で店舗を構える可部寅呉服店の可部典良社長によると、昭和30年代ごろは約200の繊維問屋があったという。「地方の小売業者が仕入れに来て、にぎやかだった。近くの京橋町には業者が泊まる旅館が多かった」と往事を懐かしむ。 しかし、流通大手の成長などで問屋は減少。1984年には多くの店が立ち退き、日本中央競馬会(JRA)の場外馬券売り場「ウインズ広島」ができた。一帯の問屋でつくる広島市問屋街本通会(センイシティひろしま)の加盟店は、今では10店足らずになった。 問屋街としての役割は小さくなったが、駅前の再開発とともに姿を変えつつある。2022年8月に閉館したホテルセンチュリー21広島の跡地には、外資系ホテル「voco(ヴォコ)広島」が27年に開業する。25年度には広島電鉄(中区)の駅前大橋線が開通する。現在の的場町電停は新しい循環ルートに組み込まれる。 長年、的場町を見つめてきた可部社長は「景色はずいぶん変わったけれど、今も家族代々、呉服店を利用してくれる常連客がいる。新しいホテルや店ができ、街全体への波及効果はあるだろう」と思いを巡らせた。
中国新聞社