日本シリーズが大谷翔平に“完敗”!?フジテレビ取材パス没収騒動では終わらない、日本プロ野球界の危機感
■ 「ここは日本だぞ」 今季の日本シリーズはソフトバンクが2連勝した後、DeNAが10月31日の第5戦にも勝利して3連勝。レギュラーシーズン3位から26年ぶりの“下剋上”日本一へ王手をかけた。しかし、WS報道の影に隠れ、スポーツ紙の扱いも10月31日の紙面では5面以降の扱いにとどまった。 4年ぶりの日本一を目指すソフトバンクの小久保裕紀監督は今回の日程にシリーズ前から危機感を抱いていた。 「皆さん(報道陣)にお願いしたいのは、ここは日本だぞということ」 10月25日の会見で報道陣にこう呼びかけた。 「やっぱりワールドシリーズとかぶるので。朝はワールドシリーズで夜は日本シリーズ。それ(ファンやメディアの注目)に値するゲームをしないと、(メディアでの)扱いは大きくならない。そういう思いもあります」 悪い予感は的中し、シリーズ開幕前からポストシーズンの“主役”はすっかりWSに奪われてしまった。 駅やコンビニなどでの「即売」に影響するスポーツ紙の1面は、読者の関心を引くニュースという編集方針で決まる。大谷選手が出場しているWSが、日本のプロ野球よりも注目を集めているのが現状だろう。 テレビの地上波にも“異変”が生じている。
■ 日本シリーズ中継よりWSのダイジェスト番組? フジテレビは10月21日、公式ホームページで「全試合を緊急編成、地上波で緊急生中継決定! 大谷翔平 ワールドチャンピオンへの挑戦」と告知した。 メジャーリーグベースボール(MLB)日本語公式サイト「MLB.JP」によると、WSは米FOXが映像制作を担当し、日本ではフジテレビとNHKBSのほか、JSPORTSやスポーツ配信サービス「SPOTV NOW」、第1戦のみABEMAでも中継された。 スポーツニッポンによると、地上波では、フジテレビが独占中継し、ドジャースが世界一を決めた第5戦の平均世帯視聴率は8.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)だった。瞬間最高視聴率は、ドジャースが優勝を決め、マウンド上に歓喜の輪ができた12時52分だった。平均世帯視聴率は10月26日の第1戦が12.7%、同27日の第2戦が13.9%、同29日の第3戦が8.2%、同30日の第4戦が9.3%と好調に推移した。 スポーツニッポンが第2戦終了時に報じた記事では、同時間帯の前4週の平均視聴率の数値を4倍近く上昇させ、“大谷効果”によるWSの注目度の高さをうかがわせる結果となった。 WSと日本シリーズの日程が重なっていても、当初は朝帯にWS、夜帯に日本シリーズと中継時間帯は重ならないはずだった。ところが、10月25日には、フジテレビが朝帯の生中継に加え、夜帯でもダイジェスト版のハイライト番組の放送を緊急決定したと発表した。日本シリーズと地上波中継が重なる事態となった。 夜の時間帯に日本の野球ファンは日米の頂上決戦のどちらを選んだのか。WSのダイジェスト版は同26日が8.1%、27日が5.6%で、同時間帯にTBSが放送した日本シリーズは第1戦が10.5%、第2戦が6.9%だった。 夕刊フジが同29日発行の紙面で「大谷人気が生んだ異常事態 日本シリーズ 視聴率でWSに惨敗」の見出しで報じた記事によれば、米大リーグ機構が発表した第1、2戦の日本での視聴者数は、第1戦が1440万人で、2戦目はポストシーズンの史上最多を更新する1590万人だった。第1、2戦を通じた日本の平均視聴者数は1515万人だった。 こうした中で毎日新聞が10月30日、NPBがフジテレビから日本シリーズの取材パスを没収していたと報じた。