「サウナに入っただけ」男性に生じたまさかの悲劇 気になる症状があったらすぐに病院に行こう
■総合診療医・菊池医師の見解は? 総合診療医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師によれば、「アトピー性皮膚炎がある人では、そうでない人に比べ蜂窩織炎になりやすいことが知られている」と言う。 「蜂窩織炎は皮膚や組織に細菌が感染し、増殖して急性の炎症が起こる病気。アトピー性皮膚炎や乾燥肌、皮膚に傷があると、細菌が皮膚のバリアを通り抜け、細菌が入り込みやすくなるため発症しやすいのです」(菊池医師)
蜂窩織炎の原因菌の代表は、黄色ブドウ球菌だ。私たちの皮膚に棲み着く常在菌で、普段は悪さをしないが、何かのきっかけで増殖をすると、蜂窩織炎をはじめとした皮膚病を引き起こすことがある。 山田さんの場合、アトピー性皮膚炎の肌がサウナでさらに乾燥したことにより、菌が増殖しやすい環境にあった可能性があるという。 「山田さんが言うように、免疫力が低下していることも発症リスクになります」(菊池医師) 乳がんや子宮がんで手術を受けた人も蜂窩織炎になりやすいが、これは、手術によりリンパ液の流れが悪くなることが要因だ。
「リンパ液の流れが悪いと、細菌感染を起こしやすい。また、糖尿病で血糖コントロールの悪い人や肥満の人は免疫力の低下から、蜂窩織炎になりやすいことがわかっています」(菊池医師) ■予防は「こまめにせっけんで手を洗う」 このため、普段から睡眠や食事、運動により、できるだけ免疫力を低下させないこと。また、肌を清潔に保ち、傷ができたら、しっかり消毒をすることなどが予防策となる。 「建設業や農業など、体を使い、外で働くためにケガをしたり、皮膚が汚れやすい職業の人は、こまめにせっけんで手を洗うこと。爪を短く切っておくことも予防策になります」(菊池医師)
早期発見も重要だ。治療しなければ広範囲に広がり、入院が必要になることもある。皮膚の痛みと熱があったら、迷わず、受診したほうがいい。 なお、蜂窩織炎と関連のある病気として、「劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症」がある。溶連菌は「人食いバクテリア」とも呼ばれ、感染しても多くの人は喉の痛み、発熱など風邪の症状にとどまるが、まれに劇症化し、手足から臓器に壊死が広がり、死に至ることがある。 2014年から患者数が増加し、現在、感染が拡大している。致死率30%と高く、救命のカギを握るのは、いかに早く治療ができるか、だ。命を守るための知識として、ぜひ知っておきたい。
本連載では、「『これくらいの症状ならば大丈夫』と思っていたら、実は大変だった」という病気の体験談を募集しています(プライバシーには配慮いたします)。具体的なお話をお持ちの方は、こちらのフォームにお送りください。
狩生 聖子 :医療ライター/菊池 大和 :きくち総合診療クリニック