【年内衆院解散の可能性大】メインシナリオは自民党総裁公選後の解散、岸田首相の一か八か解散もあり得る
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト) ■ 「岸田おろし」を仕掛ける派閥そのものが消えた 【著者作成図表】橋本政権以降の内閣支持率。こうして見ると、任期の間、一定の支持率を保ったのは二人の首相だけと言える 今年秋に自民党総裁選が実施される。総裁選に前後して衆院解散となる可能性が高い。首相交代や連立政権組み替えに至る可能性があろう。いずれにせよ、自民党を軸とした政権が継続しようが、新首相や連立相手次第で経済政策が変わる。 【政治シナリオ】 <支持率は低いが、政局は生じていない> 昨年末に浮上した政治資金問題を背景に、内閣支持率と自民党の政党支持率はともに低迷している。特に、内閣支持率が自民党支持率を下回ったままである点が目を引く。自民党支持層の一部が政権を見放している状態であることを示唆する。 過去の例を見れば、与党内で「〇〇おろし」と呼ばれるような政局、倒閣運動が生じやすい局面のはずだが、これまでのところ、政局や倒閣運動が本格化するには至らず、岸田政権は継続している。 派閥の在り方が問題となり政局を仕掛けづらくなったこと、それを仕掛けるような派閥自体がなくなったためと考えられる。 4月28日に控える衆院補欠選挙の結果次第では、「岸田おろし」が本格化するとの見方もあるが、派閥のほとんどが解散した状況下では、実際に倒閣に至る可能性は低いように思われる。 よって、メインシナリオとしては秋の総裁公選までの岸田政権継続、そして新・総理総裁による衆院解散を予想する。
■ 2025年までに訪れる2つの国政選挙 <メインシナリオは秋の総裁公選後の衆院解散> 3年の総裁任期満了に伴い実施される総裁公選では、国会議員のみならず党員党友が投票権を有する。翌2025年の7月に参院議員、10月に衆院議員の任期満了を控えているため、自民党にとって2つの国政選挙の「顔」として誰が相応しいかを選ぶ総裁選になる。 内閣支持率が大幅に上昇し、昨年来の低下を挽回すれば岸田総裁が再選される可能性は残されているものの、低迷したままであれば新しい総裁が選ばれそうだ。 その新首相が、総裁選を勝ち抜いた余勢を駆って、衆院解散・総選挙に踏み切るだろう。新政権発足直後ならば「ご祝儀相場」により高い支持率を得ることもできる。 ちょうど3年前の2021年秋に、自民党総裁選を勝ち抜いた岸田首相が直ちに衆院解散・総選挙に打って出たのと似た展開になりそうだ。 <リスクシナリオは総裁公選前の衆院解散> リスクシナリオとして、岸田首相による総裁公選前の衆院解散を考える必要があろう。内閣支持率、自民党支持率ともに低迷しているものの、岸田首相は依然として長期政権を目指しているように見える。 昨年末に、政治資金問題を機に安倍派の主要メンバーを内閣および党役員から排除、安倍派の影響力低下を図った。また、今年に入ると、従来かなり強いこだわりを見せていた宏池会をあっさりと解散した。 派閥よりも自民党の改革を優先したと言えるが、自らの支持率上昇や政権維持への強い意欲があってこその決断であろう。