「就活と研究どっちを優先すべき?」理系院生の悩み「就活優先とかバカじゃないのか?」圧を送る研究生と疎外される就活生【作者に聞く】
理系大学・大学院の実情を描く理系女ちゃん(@rikejo_chan)の「研究は大事だけど就活も大事って話」に注目。研究室では、研究より就活を優先する学生に圧がかかるという話を描く。「研究室は、就活を優先する学生に冷たい?」そんな実情を作者の理系女ちゃんにインタビューした。理系大学、院から研究室へ進みたいと思っている学生は参考にしてほしい。 【漫画】大学院の生活を知る ■就活を優先すると「嫌味」を言われてしまう研究室の空気!? 「理系」な話をコンセプトに漫画を描く理系女ちゃん(@rikejo_chan)に描きはじめた理由を聞いた。「理系学生の割合は、大学進学者のうち35%(令和2年度推計)で、そこから大学院へ進学したりアカデミアに残る人はもっと少なくなります。理系に対する解像度が少しでも多くの人の間で高くなれば、もっと理系に興味を持ってくれる人が増えたり、現在アカデミアが抱える課題を解決できたりするのではないかと漫画の投稿を始めました」と話す。 「理系」の大学の進学後は、大学院への道へ進む人も少なくない。ただ、研究室と就活の両立は大変なようだ。「推薦などでの就職をする学生は、研究に時間を費やせている一方、近年人気のある文系総合職等に就職する場合は競争率も高いので、研究室にあまり来ない学生もいるように感じます。博士課程の場合は、論文の本数など、卒業要件が厳しくなるため修了できず、内定後に単位取得、退学する学生もいました」と実情を語る。 漫画では、就活を優先する学生に対して、研究を優先する学生から圧がかかるシーンも描かれる。ユーザーからは、研究を優先する人は「けっこう実家が金持ちとかで、転んでもセーフティーネットがあるってパターン多い」という意見もあった。 理系女ちゃんは「本来は研究室に通うことが当たり前なはずです。修了できなければ、内定もらっても意味がありませんから。しかし、近年は大学が留年者を出さないように運営を行っているため、『真面目に研究に取り組まずとも修了できてしまう』という背景があり、大学院に進学したのにもかかわらず、研究に真面目に取り組まない学生の増加が問題になっています」という。 「大学の推薦枠を使う場合は、就職活動は比較的楽になりますし、むしろ就職する上で真面目に研究に取り組むことが求められます。また、研究を頑張って大学院の奨学金の全額返還免除を狙っている学生も周りには多くいるので、『研究を頑張ってる=裕福、暇、遊んでる』という偏見は無くなってほしいなと思います」と、話す。 今回、理系大学や研究室を視野に入れている学生向けにアドバイスをお願いした。「理系の場合、修士課程にエスカレートに進学することが多くの分野において当たり前となりつつありますが、『大学院で学びたいことはあるのか?』それは本当に『自身のキャリアアップに必要なのか?』を考えて、研究室選びや大学院進学に取り組むといいと思います」 「日本の多くの企業はいわゆるポテンシャル採用を行っているので、大学院での生活が直接就職に役立つことはあまりありません。また、研究室側としても国や企業から獲得した予算を割り当てているのにもかかわらず、真面目に研究に取り組んでくれない学生は困るので、研究を頑張ったり、専門分野を活かす仕事に就きたい訳でなければ、大学院には進学しない方が研究室と本人双方にとってよい結果になると思います」 理系大学院へ進学すると研究で忙殺される人も多く、外界との関わりも減り、所属する大学院や研究室の慣習を常識に据えてしまう人も少なくない。「実際漫画を描いていて、異なる所属や分野の方から厳しいコメントをいただくこともありますね」世間とのズレを感じることが少なくなると、このような摩擦が起きてしまうのかもしれない。互いに尊重し合える関係を構築してほしいものだ。 取材協力:理系女ちゃん(@rikejo_chan)