BM事件で信頼失墜「中古車業界」は変われるか、インセンティブ廃止、総額表示など改革の動き
中古車買い取り大手カーチスホールディングスの長倉統己社長も、個人的な意見と断りつつ、「インセンティブありきのビジネスは断ち切るべきだ」と賛同する。現状の中古車業界では給与全体に占めるインセンティブの割合が高いが、「ベースとなる給与や賞与を上げてインセンティブの比重を極力下げたい」と変革を示唆する。 中古車両販売時のトラブル防止へ向け、業界を挙げた取り組みも進んでいる。 従来、業界では安価な車両価格を表示して集客するが、実際には保険料など諸経費が上乗せされるので購入価格が予想以上に高額になるトラブルが少なくなかった。この問題に対しては、中古車販売事業者も加盟する自動車公正取引協議会が動くことで、昨年10月に「改正自動車公正競争規約・同施行規則」が施行された。
中古車の販売価格の表示は、“車両価格”に保険料などの“諸費用”を加えた「支払総額」にすることが義務化され、消費者にとっては購入金額が明瞭になった。ある調査会社の中古車業界担当者は、「支払総額の義務化で、不透明だった業界環境の一部がリセットされる。これを機に、いかに真面目に商売をしていくか、信頼回復の道はそれ以外にない」と各企業の奮起に注目する。 ビッグモーター問題で明らかになった、板金部門による車両保険の水増し請求については国土交通省が重い腰を上げた。今年3月29日、「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」を公表。板金や塗装などを行う整備事業者を対象に、整備箇所の撮影や自動車ユーザーへの適切な説明を実施することを、”望ましい取り組み”として打ち出した(義務ではない)。
自動車の整備は、一般の消費者にはわかりづらい領域だ。自分の車がどのような整備をされているのか、そしてそれがどのような工数を経ているのかが見えづらく、ブラックボックスとなりやすい。中古車事業者だけではなく、新車ディーラーでも整備領域での不正は頻発している。今回のガイドライン制定が自動車のアフターマーケット全体での信頼向上に繋がることが期待される。 ■伊藤忠のBM買収に歓迎の声 さらに複数の業界関係者が信頼回復の“妙薬”として熱い視線を注ぐのが、大手総合商社・伊藤忠商事による「ビッグモーター買収」だ。創業家が関わらない形での再建を目指すとされる。