“学園ドラマ”黄金期から約20年 道枝駿佑主演『マルス』がミレニアル世代に刺さる理由
平成生まれ世代の視聴者を懐かしくさせる『マルス』のセリフ回し
さらにミレニアル世代の視聴者を懐かしくさせるのが、良い意味で暑苦しいストーリーだ。「俺たちがこの腐った世界を変えるんだよ」「俺たちが新しい時代を創る」「これは革命だ」というゼロの熱い台詞に多くの人はムズムズとした感覚を覚えるだろう。「なに青臭いこと言ってるんだ」と一蹴したくなる気持ちも分からなくはない。でも、だからこそ、この物語の意義があるのではないだろうか。ゼロのように何かを変えようとする人に対する冷笑的な見方は年々強まっているように思える。 その背景には、正義だの革命だのと言ってられない景気の悪化に伴う生活の困窮がある。第2話での不破(日向亘)の台詞にもあったように、「正義を振りかざして間違いを正しても腹は満たされない」というのが本音だろう。エリ(大峰ユリホ)のように少しでも人に痛いと思われるような行動を取ったらSNSで晒され、時にその本人が自死を選ぶまで追い込まれてしまう現実がそこに拍車をかけている。だったら、不満はあってもどうにかやり過ごして平和に日々を送る方がいいと思う人が増えるのは当然だ。けれど、「それではダメだ」と全霊で訴えかけてくるのが本作だ。闇バイト、ネット論争、炎上系インフルエンサー、ゲーム課金、ホストクラブの売掛など、現代の問題を扱いながらも、その根底には間違った社会に反旗を翻すギラギラとした平成マインドがある。それが、このドラマの魅力だ。 第8話では、サイバーテロの首謀者に仕立て上げられたマルスの無実を証明するため、ゼロたちが学校に立てこもる。立てこもりなんて久しくドラマでは描かれないので、不謹慎ながらエンターテインメントとして心が躍ってしまうのは筆者だけだろうか。
苫とり子