【マレーシア】東海岸鉄道を貨物輸送で活用 事業主体MRL、プロドゥアと覚書
マレーシア財務省傘下の鉄道事業体マレーシア・レール・リンク(MRL)は10日、マレー半島で建設が進む東海岸鉄道(ECRL)による貨物輸送に向けて、国内の自動車市場でトップシェアを握る国民車メーカーのプロドゥアなどと覚書を交わした。官民が一丸となってECRLの活用を目指す。 プロドゥアのザイナル・アビディン・アフマド社長兼最高経営責任者(CEO)は「製品の輸送手段の多様化を視野に入れており、ECRLは有望な選択肢の一つだ」とコメント。MRLとの覚書に基づき、ECRLを活用した東海岸部への製品の輸送の可能性を探っていくとした。 ダイハツ工業が出資するプロドゥアは、首都圏スランゴール州ラワンのスンガイチョー地区の本社敷地内に自動車製造工場2工場と研究開発(R&D)施設を構え、国内外に乗用車を出荷している。特に東海岸部への製品の輸送手段を必要としているという。 マレーシア自動車協会(MAA)によると、プロドゥアの2023年の国内新車販売台数は前年比17.1%増の33万325台。市場シェア41.3%を獲得し、首位の座を堅持した。生産台数も33万4,482台と、2位の国民車メーカーのプロトン(15万4,866台)に大差をつけ首位となった。 MRLは同日、パハン州の東海岸にあるクアンタン港の開発・運営を担うクアンタン・ポート・コンソーシアムとも覚書に調印。同港の利用者に、自動車による貨物輸送から鉄道を活用した貨物輸送への移行を促していく方針だ。 首都圏―東部間の貨物輸送は現在、クアラルンプール・カラック高速道路を利用した自動車での輸送がメインとなっている。政府は、企業にECRLの活用を促すことでクアラルンプール・カラック高速道路の渋滞を緩和するとともに、より安全な貨物輸送を目指す。プロドゥアのようにこの取り組みに協力する企業には、優遇措置(インセンティブ)を付与するという。 アンソニー・ローク運輸相は覚書調印式後の記者会見で、「プロドゥア1社だけでは十分ではない。インセンティブを付与することで、ECRLの沿線上に位置する多くの製造業にECRLを活用してもらいたい」との考えを示した。 ■マレー半島部の物流の要に ECRLは全長665キロメートル。タイ国境に近いクランタン州コタバルからトレンガヌ州、パハン州を通り、スランゴール州ポートクランまでを5時間で結ぶ。 建設工事の進捗(しんちょく)率は、今年3月時点で64%に達した。コタバル―ゴンバク総合交通ターミナル(IITゴンバク、スランゴール州)間は26年12月までの完工、27年1月までの開業が見込まれている。IITゴンバク―ポートクラン間は27年12月に完工し、28年1月以降に全面開業する見通し。 マレー半島を横断する鉄道の建設によってマレー半島東西の経済格差を解消するほか、東部のクアンタン港と西部のクラン港と結ぶ貨物鉄道の大動脈としての役割が期待されており、貨物が輸送全体の7割、旅客が3割となる見通しだ。