要注意!賃金引き上げがインフレを加速させてしまう憂鬱
FRBのパウエル議長は昨年11月までインフレ率の上昇を「一過性」と語っていた(写真:ブルームバーグ)
今後の投資環境を見通すためのグローバルな視座を提供する連載「ホットイシュー」。インフレを制する中央銀行の役割と直面している難題について論じた今回のコラム(原題は The Mismanagement of Inflation Expectations )の著者、ハワード・デイビス氏は英国を代表するエコノミスト。監査委員会、英国産業連盟などを経て、イングランド銀行副総裁、金融サービス機構(FSA)初代理事長、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス学長などを歴任した。現在はナットウエスト・グループ会長を務めている。 © Project Syndicate 1995-2021中央銀行の当局者は「作文の達人」である必要はない。彼らのジョブディスクリプション(職務記述書)には通常、”格調高い文章を作成する能力”は含まれていない。むしろ、つい最近まで多くの金融政策担当者は「口は災いのもと」の原則に従っていた。 1920年から1944年までイングランド銀行(BOE)総裁を務めたモンタギュー・ノーマンは、「いっさい説明しない、いっさい謝らない」をモットーに掲げていた。同様に、アラン・グリーンスパン元連邦準備制度理事会(FRB)議長はかつて「私は支離滅裂な言葉をつぶやくことの重要性を学んだ」と誇らしげに述懐したことがある。 だが、こうした見解は時代遅れのものだ。1990年代にBOEの上級幹部は1年間に平均13回しか講演を行っていなかった。しかし、過去10年間の平均は80回を超えている。このトレンドラインは上向きだ。他の中央銀行でも同じようなパターンが見られる。
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ハワード・デイビス