「実質賃金の上昇だけでは不十分」連合のシンクタンクがフォーラム開催、賃上げや雇用の在り方議論
有配偶女性は「最低賃金上昇」でも“手取り増”にならない可能性
続けて登壇した永瀬教授も「賃金上昇と合わせて、働き方や社会保障の改革が必要」と訴えた。 「これからの時代は、これまでもっとも高い賃金を得てきた、男性の現役世代人口が減少し、働く女性と高齢者の割合が増加すると予測されています。 日本でも、女性の高学歴化や就業経験の増加から『無職の妻』はこの20年で40%から20%強に減っていきました。 ですが、有配偶女性の6割は、税金・社会保険料の支払いや、夫に支払われる配偶者手当を考慮し、年収100万円あるいは130万円を超えない範囲で働くという『就業調整』を行っているといいます。 今後仮に最低賃金が上昇したとしても、有配偶女性の労働時間が減るのみで、手取りの増加にはつながらない可能性があります。 しかしながら、人生100年時代ではより高い生涯所得が求められ、また今後の人口減少を考えれば、労働力の確保が重要になります。 働き方や社会保障について、共働きを前提に、男性も育児に参加できるようにするとともに、女性の就業調整につながるような抑制的な政策から、就業を推奨する政策へと転換する必要があるのではないでしょうか」(永瀬教授) また、太田氏からは「高齢労働者が増加し、その世代の労災も増えている。高齢者の就業先が介護施設など、リスクの高い業種に集中している可能性があるのではないか」と、働き方に関する新たな懸念も示された。
「政治はもちろん、労組や経営者も真剣に考えて」
フォーラムの終盤、パネルディスカッションの総括を求められた吉川氏は「これまでの議論で、激しい意見の対立などはなく、むしろ解決の方向にむけて、コンセンサスが得られていると思う」とコメントし、以下のように続けた。 「ここ20年、30年を振り返ってみると、賃金・雇用に大きな問題のある時代が続き、日本経済に大きなマイナスを与えてきました。 雇用や賃金の問題というのは、人の人生にとっても、社会にとっても非常に大きなテーマです。政治ももちろんですが、労働組合や企業の経営者も、このテーマについて、より真剣に考える必要があると思います」
弁護士JP編集部