〈日独GDP逆転〉課題解決に向けて議論伯仲のドイツと、居直る日本。両国でまったく異なる「一喜一憂すべきでない」の深層にあるもの
幻想めいた日本の将来ビジョン
現在、岸田政権は日本の将来ビジョンとして、「Society 5.0」という構想を提示している。 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立させるというものだが、競争力ランキングの低迷ぶり、DX化の遅れを考えると、かなり幻想的なビジョンのように見える。 何よりも、そこには将来の日本の経済構想を考え、それを実現するための道筋がしっかりと示せていない。 人口減に直面する日本では成長パラダイムをあきらめるべきと指摘する経済学者が増えている。無限の成長を求める資本主義により地球はすでに壊れつつあり、持続可能性の観点からももはや日本の恒久的成長はありえないというのだ。 そう考えると、GDP世界ランキングの順位などはもはやどうでもよく、日本として行うべきことは、はっきりしている。 まずは過去の政策を批判的に検証し、議論を通じて現状の課題を確認する。そして、その上で持続可能な経済・社会の未来像をしっかりと打ち出すことである。求められるのはけっして「Society 5.0」のような幻想めいたビジョンではない。 文/サーラ・スヴェン 写真/shutterstock