2回戦 広陵、全力プレー貫く 八回、意地の2点 「夏につなげて」 /広島
<センバツ2019> 夏にきっと戻ってくる--。第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第8日の30日、広陵は2回戦で東邦(愛知)と対戦し、2-12で敗れた。広陵は三回までに6点を奪われ、勢いに乗った相手打線を止めることができなかった。八回に主将の秋山功太郎選手(3年)が意地の適時打で2点を挙げたが、及ばなかった。最後まで諦めず全力プレーを見せたナインに、スタンドからは温かい拍手が送られた。【隈元悠太、加藤佑輔】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 東邦 204000330=12 000000020=2 広陵 序盤から苦しい展開が続いた。1回戦で150キロの速球で注目された河野佳投手(3年)は初回に2四球を与えるなど制球が乱れ、盗塁を絡めた攻撃で2点を失う。三回には打撃にも定評がある相手エースから本塁打を浴びるなどし、一挙に4失点。この回途中で降板した河野選手は「甘めの球を徹底的にとらえられた」と肩を落とした。 それでも交代した石原勇輝投手(同)が四~六回を無失点で抑える力投を見せ、アルプススタンドを活気づけた。石原投手の父、芳男さん(46)は「押されているけど、夢舞台でよくやっている」と 声をからして応援した。 攻撃では得点圏に度々ランナーを進めるもののあと一本が出ず、七回まで無失点が続いた。六回に右安打を放った岑(みね)幸之祐選手(同)は、練習のパートナーだった一つ上の先輩から甲子園出場のお祝いにもらったバッティンググローブを身につけていた。「先輩の思いを背負って打席に立った。ヒットはうれしいが、打線がつながらなかったのは課題」と話した。 12点差で迎えた八回、古豪が意地を見せた。先頭打者の中冨宏紀選手(同)が三塁打を放ち、スタンドからも笑顔がこぼれた。その後四球やゴロで2死一、三塁となり、秋山選手に打順が回った。「最後まで諦めたくない」と放った適時三塁打で2点を挙げ、一矢報いた。高校時代野球部主将だったという秋山選手の兄大輔さん(23)は「主将になった時はどうやってチームをまとめるか悩んでいたようだが、選手宣誓通り最後まで諦めないプレーを見せてくれた。夏につなげてほしい」と話した。試合を終えた選手たちは悔しさをにじませながらそれぞれの課題を挙げ、「夏にまた戻ってくる」と誓っていた。 ◇兄に誓う「日本一」 中冨宏紀選手(3年) 「夏にもう一度ここでプレーして、今度こそ日本一になる」。東邦戦で4打数2安打と気を吐いた中冨宏紀選手は、いつも優しく励ましてくれる兄の友生さん(22)に感謝の気持ちを込め、力強く語った。 友生さんは元高校球児で、高校1年の夏にけがなどを機に野球を諦めた。中冨選手も1年の夏、慣れない寮生活や厳しい練習で野球をやめたいと感じていた。そんな時、友生さんが電話で雑談中に「野球をやめるのは後悔するんじゃないか」と言葉をかけたという。自身がやめた時のことを思い出したからだ。 中冨選手はその一言で「頑張るぞ」と気持ちを切り替え、再び野球に打ち込むように。友生さんも弟の姿に触発されて遠ざけていた高校野球と向き合うようになり、仕事が休みの日にはグラウンドに足を運び、弟の練習を見守っている。センバツ出場が決まった時には「目指せ日本一」と自ら木片に彫ったお守りを渡した。 中冨選手はこの日もカバンにお守りを忍ばせ、甲子園に入った。「お守りと一緒に夏を目指す」。新たな誓いだ。【隈元悠太】 ◇50人演奏力強く ○…広陵のアルプススタンドでは、吹奏楽部が迫力ある演奏を披露した=写真。この日は、OB・OGも駆けつけ、総勢約50人で臨んだ。大会の1カ月前から週末は8時間にも及ぶ猛練習を重ね、オリジナル曲「チアソング」や、定番の「サウスポー」「タイムリーマーチ」など計10曲を準備。パーカッション担当で副部長の鈴木七音(なお)さん(3年)は「選手たちが『頑張ろう』という気持ちになれるような力強い演奏を届けたい」と話した。