「20代よりも強くなりたい」前田健太プロ人生初の長期戦線離脱からカムバックへ 36歳の静かなる闘志
4月11日に36歳の誕生日を迎えた前田健太。 今シーズンを前にした沖縄での自主トレで、前田は一日の練習後、海岸で夕日を見ながらこう語り始めた。 【画像】36歳・9年目を迎えた前田のアメリカ生活 「年齢を重ねて行けば衰える可能性がありますけど、20代よりも強くなりたいと思ってますし、昔よりも球を速くしたいと思っています。 ここ2、3年は自分の本来の形で投げられていないので、もう一度いい姿を見せたい」 このオフからの密着取材で見えた前田の年齢と戦う姿、そして胸の奥に秘めた静かな闘志を紹介する。
沖縄の自主トレで見せた驚きの時間
今年1月、沖縄。前田のシーズンはここから始まる。 1年間戦い続けるための体力作り。そこで驚いたのは、ストレッチにかける時間だ。肩や股関節を含め、およそ1時間もの時間をかける。 ーーストレッチには結構時間を費やしますか? ストレッチと肩とか股関節は、たぶん全部で1時間くらい。やらないと気持ちが悪いし、体が動かない感じにもなる、違和感もあるし、やらないと不安。 メジャー9年目、ウォーミングアップを終えると、準備に余念のない36歳がボールを握る前に必ずやることがある。 それは、マエケン体操。広島時代からの欠かさないルーティンだ。
後輩から慕われる優しい先輩
今年の自主トレは、広島の後輩2人と共に体を動かしていた。プロ5年目の森下暢仁と、プロ7年目の遠藤淳志。この若手2人にとって前田は生きる教科書だという。 ケガで苦しんだシーズンを送ったり、調子が上がらず二軍生活が続いたり…、そんな経験をして来た2人にとって、これ以上ない貴重な時間だ。 遠藤がスライダーを習得するべく、練習をしていると、「(握りが)ちょっと横過ぎるから、もうちょっと真ん中に。ボールの右端だから…」とアドバイス。 身振り手振りを交え、ここまで培ってきた全てを後輩たちに伝授する前田健太。自らのチカラで切り裂いた道が、今も続いている。
日米通算150勝も右肘を手術
8年前の2016年。前田は海を渡り、昔からの夢だったメジャーリーグに挑戦。 日本人投手では史上9人目の2年連続二ケタ勝利をあげ、二度のワールドシリーズを経験。日米通算150勝をマーク。日本人メジャーリーガーの評価を高めてきた一人となった。 そんな順風満帆なシーズンを送ってきた矢先、右肘が悲鳴を上げる。 2021年、メジャー移籍後初の開幕投手を任されるが8月、右前腕の張りを訴え負傷降板。検査の結果、肘の手術をすることを決断した。9月にはトミージョン手術を受け、人生で初めての長期戦線離脱となった。 トミージョン手術とは損傷した肘の靱帯を切除し、他の部位から腱を移植して修復を図る手術で、過去には松坂大輔やダルビッシュ有、そして大谷翔平も受けた手術だ。 翌2022年は1年間リハビリに時間を費やし、復帰した昨シーズンも6勝止まりと満足な成績を残せなかった。 今年で36歳の前田。ここからはどこまで現役を続けることができるのか、そんな戦いと向き合っている。