「こうのとりのゆりかご」匿名性と出自知る権利…熊本市の専門部会が公開質問状に回答
親が育てられない子を匿名でも預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市西区)を巡り、6月に「匿名を貫くことは容認できない」とする報告書をまとめた熊本市の専門部会は31日、蓮田健(たけし)院長からの公開質問状に回答した。匿名の認否に関しては「安心して預けられることと、子どもの出自を知る権利の保障の双方が重要」とし、「バランスの取り方を一緒に検討できれば」と呼びかけた。 【写真】慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」。左側の扉を開け、その中へ赤ちゃんを預け入れる 同日、部会長の安部計彦(かずひこ)日本児童相談業務評価機関代表理事が蓮田院長に回答書を手渡した。記者会見した安部部会長は、部会として秘匿性の部分にこだわることに対し「不適切だ。委員とも話し合い、次回の報告書ではゼロから書き直すつもりだ」と柔軟な姿勢を示した。 公開質問状では、母親の同意がないまま児童相談所が身元調査をすることについても見解を求めた。回答書は「子どもの福祉に関する調査は児童福祉法に認められている」と指摘。生活保護などの支援で預け入れを回避できる可能性に触れ、子どもにとって最善の利益を判断するための「適切な業務」とした。その上で、出自情報が分からなくても「(親は)『あなたに幸せになってほしい』と思って預けた。全力で応援する」との思いを関係組織全体で伝えてほしいと記した。 出自につながる調査に関し、同じく見解を問われていた大西一史市長は「保護者らの意向を尊重して慎重かつ柔軟に対応」すると書面で答えた。 蓮田院長は回答書に一定の評価をしつつ「17年間、現場で苦境にある女性に向き合ってきた身としては、距離感が縮まらないもどかしさはある。匿名性はほぼ絶対条件。話し合いの提案があれば大歓迎だし、声を上げ続けたい」と話した。
西日本新聞