ヤバい! 新型[CX-60]が売れてない! なぜ設計の古い[CX-5]よりも売れていないのか? 近々行われる起死回生のマイナーチェンジで爆上がり?
■CX-60の評判
なぜCX-60は低迷するのか。販売店に尋ねると「乗り心地が硬い、変速ショックが大きいとお客様から指摘され、CX-60の売れ行きにも影響を与えた」という話が聞かれた。 この背景には、SNSの普及も影響しているだろう。購入したり、試乗した人達がSNSで発信すると、情報が幅広く共有される。特にマツダ車に関心を寄せるユーザーには、クルマ好きが多いため、SNSでもクルマ関連の情報を積極的にチェックする。そうなるとCX-60の欠点に関する情報も拡散されやすい。 また乗り心地は、走行中は常にすべての乗員が体で感じている。エンジンの吹き上がりが分かるのはドライバーで、実感するのも峠道や高速道路の進入時に限られるが、乗り心地は違う。したがって売れ行きを左右しやすい。 もうひとつの理由として、乗り心地が小回りの利きや車内の広さと違って感覚に基づくことも挙げられる。味覚にも似て、大勢の人達が「硬い」と指摘しているのを知っていると、自分もなんとなく硬いように感じてしまう。 特に今のクルマは、走りに関係する欠点を見つけにくい。走行安定性が悪かったり、動力性能が著しく低いクルマはほとんどない。そのために欠点の指摘対象が、乗り心地、ステアリングの操舵感、エンジンの回転感覚、トランスミッションの変速ショックなど、感覚的な部分に偏りやすい。その結果、クルマ関連の媒体を含めて、乗り心地が欠点として指摘されやすい。
■CX-5とCX-60を改めて比較してみる
このほかCX-60の販売が低調な背景には、CX-5との機能的な重複もある。CX-60の駆動方式は、後輪駆動とこれをベースに開発された4WDで、エンジンは縦向きに搭載する。そのために前輪駆動の横置きエンジンでは困難な直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボも設定できた。 ボディサイズにも違いがある。両車を比べると、CX-60の全長はCX-5よりも165mm長い。ホイールベースも170mm上まわる。それなのに車内の広さはあまり変わらず、身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は両車とも握りコブシ2つ分で同等だ。 荷室容量も、CX-5は522L(サブトランクを含む)、CX-60は570Lとされる。リアゲートの開口幅はCX-60が少し広いが、荷室の広さに大差はない。 このようにCX-60の全長とホイールベースがCX-5よりも長いのに、車内の広さが同程度になる理由は、CX-60が後輪駆動を採用してボンネットが長いためだ。CX-60が全長を165mm伸ばした内、120mmくらいはボンネットの拡大に費やされた。そのためにボディが大きい割に、居住空間や荷室はあまり広がっていない。 その一方で価格はCX-60が割高だ。CX-60・25S・Sパッケージ(322万3000円/2WD)と、CX-5・20S・ブラックトーンエディション(323万9500円)を比べると、価格はほぼ同額だが、装備はCX-5が充実する。 CX-60に標準装着されない後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットモニタリング、ハイビームを保ちながら対向車などの眩惑を抑えるアダプティブLEDヘッドライト、運転支援のレーンキープアシスト、渋滞時の運転をラクにするクルージング&トラフィックサポート、リアゲートの電動開閉機能、運転席の電動調節機能、前席のシートヒーターなどがCX-5には標準装着される。 エンジン排気量はCX-5が2L、CX-60は2.5Lという違いがあるが、実用重視のユーザーにはCX-5が買い得、CX-60は割高と受けとられる。 以前の3列シートのCX-8は、CX-80の発売前に廃止されたが、CX-5とCX-60は実用性が同程度なのに併売されている。そのために人気と売れ行きが二分されてしまった。 以上のようにCX-60とCX-5を比べると、走りのメカニズムや運転感覚は異なるが、居住性や積載性は同等だ。しかも価格はCX-60に割高感が伴う。外観はCX-60のボンネットが長いものの、魂動デザインだからCX-5と比べて大きな差はなく、ユーザーを奪い合っている。CX-60では不利な条件が重なった。 しかし、朗報が入ってきている。2024年10月10日に発売を開始した新型CX-80の知見を活かしたマイナーチェンジが行われ、乗り心地やシフトショックなど指摘されているネガティブな部分が改良されるという。そのマイナーチェンジモデルはどのようなモデルになっているのか、しっかり改善しているのか、期待して待ちたい。