昼夜ともに豪華顔合わせ!歌舞伎の魅力溢れる歌舞伎座「四月大歌舞伎」上演中
仁左衛門・玉三郎の競演に沸いた夜の部
人間国宝・片岡仁左衛門と坂東玉三郎の競演が話題の夜の部。幕開きは、四世鶴屋南北の『於染久松色読販(おせめひさまつうきなのよみうり)』より、土手のお六と鬼門の喜兵衛に焦点を当てた人気作。惚れた男のために悪事を働く“悪婆”と呼ばれる役柄の土手のお六を玉三郎、色気ある悪に満ちた喜兵衛を仁左衛門。昭和46(1971)年に初めてふたりで勤めて以来、上演を重ねてきた当り役で、 「玉三郎さんとのコンビがこのときからスタートしたようなもので、思い出深いお芝居です」 と仁左衛門は話し、 「玉三郎さんのお六との呼吸は、自然に合います。強請りの場では、ちょっと間の抜けているところも見せます。そこが南北さんの芝居作りの巧さでしょう」 と語る。 凄味を見せながらも、ふたりの息の合った強請りの場は観客の心を引き込み、山家屋清兵衛(中村錦之助)に見破られ目論見が外れる件はユーモアある幕切れとなり、観客からは笑いと共に大きな拍手が起こった。 続いては、仁左衛門・玉三郎が魅せる舞踊『神田祭(かんだまつり)』。江戸の二大祭のひとつ「神田祭」を題材として、粋でいなせな鳶頭を仁左衛門、艶やかな芸者を玉三郎が勤め、華やかな江戸風情が場内を包んだ。賑やかな祭囃子で幕が開くと、そこは祭り気分に浮き立つ江戸の町。仁左衛門演じるほろ酔い気分の鳶頭が登場し、江戸前のすっきりとした踊りを見せて祭りを盛り上げる。続いて、玉三郎演じる芸者が自らの思いの丈をくどきで表現する場面、そしてふたりが揃って踊る場面では、その美しさに客席も華やぐ。鳶頭が大勢を相手にした立廻りでは、割れんばかりの拍手が送られた。 夜の部の打ち出しは、舞踊『四季(しき)』。明治・大正時代に活躍した女流歌人の九條武子による本作は、日本の四季折々の風情を美しく描き出し、「春 紙雛」「夏 魂まつり」「秋 砧」「冬 木枯」を通した上演、また歌舞伎座での上演は実に43年ぶりとなる。 「春 紙雛」では桃の節句に飾られた尾上菊之助の女雛、片岡愛之助の男雛の紙雛の仲睦まじい恋模様が描かれ、「夏 魂まつり」は夏の風物詩である大文字の送り火を舞台に、中村芝翫の若旦那を中心に芝翫の長男・中村橋之助が若衆、三男・中村歌之助が太鼓持、甥・中村児太郎が舞妓を勤めるなど成駒屋一門が情緒豊かに舞う。「秋 砧」は筝の音に乗せて、夫を想う片岡孝太郎勤める若妻の心をしっとりと描き出し、「冬 木枯」では尾上松緑と坂東亀蔵のみみずくが見つめる先で、木枯らしに吹かれ舞う木の葉の動きを群舞で鮮やかに表現。木の葉女を勤める尾上左近を中心に木の葉男の坂東亀三郎・尾上眞秀が軽やかに踊る姿、とんぼやアクロバティックな動きが盛り込まれた振付に拍手が起きた。情緒豊かな日本の四季の変化を描く優美な舞踊に、酔いしれるひとときとなった。 見どころ満載の歌舞伎座4月公演「四月大歌舞伎」は4月26日(金)まで、東京・歌舞伎座で上演中。 <公演情報> 歌舞伎座「四月大歌舞伎」 【昼の部】11:00~ 一、双蝶々曲輪日記 二、七福神 三、夏祭浪花鑑 【夜の部】16:30~ 一、於染久松色読販 二、神田祭 三、四季 2024年4月2日(火)~26日(金) ※休演 10日(水)、18日(木) 会場:東京・歌舞伎座