栗原恵が春高バレー女子で注目したチームと選手 プレーが「胸に残った」就実、大友愛の娘は「ずっと狙われていた」
【大友愛の長女はサーブで狙われた】 ――今大会は強豪の東九州龍谷や、昨年のシニア代表に高校生で唯一登録された大友愛さんの長女・秋本美空選手(2年)擁する共栄学園も一回戦負けと、注目校が早々に散ることも多かったですね。 栗原 共栄学園を破った熊本信愛(熊本)は昨年もすごくいいバレーをしていたので、面白い対戦になるだろうと思っていました。お互いにコンビバレーを展開したい中で、熊本信愛のほうがうまく機能していましたね。 また、秋本選手は熊本親愛のサーバーにずっと狙われていたので、サーブレシーブで精いっぱいの状況。そうして第1セットをとられ、第2セットも奪われそうになった時に、中村文哉監督が指示を出して秋本選手をサーブレシーブから外した。攻撃に集中させたわけですが、間に合いませんでした。 ――中村監督は「身長が高くて、サーブレシーブもできる選手を育成しなければいけない」と、よくおっしゃっていますね。 栗原 共栄学園はサーブレシーブが乱れてオープン攻撃になって、相手にブロックタッチを取られたりアウトにしてしまったり。それで第1セットを取られた時点で、秋本選手をはじめ、みんな表情が苦しくなっていました。 共栄学園は本来、ブロックがいい「組織的でディフェンシブ」なチームなんです。練習を見に行った時も、中村監督がブロックをとても細かく指示していましたし、選手同士でも「ストレートをどれだけ開けるか、締めるか」など、徹底していた印象があります。それが春高では、ブロックと後ろの選手との関係性もあまりうまくいかず、力を発揮できなかったように見えました。 ――就実に敗れてベスト8に終わった金蘭会はどうでしたか? 栗原 上村杏菜選手(3年)の怪我が大きかったですね。準決勝で敗れた昨年は、インタビューで「自分が決め切れなくて負けてしまった」と涙を流していたのが印象的でした。 今大会にかける思いは強かったと思いますが、就実戦は少し苦しい展開で終わってしまった。ただ、ベスト8という結果は組み合わせの運もありあますよね。 上村選手だけでなく、身長182cmのミドルブロッカー・井上未唯奈選手(3年)もいいプレーをしていました。昨年は怪我で出られなかったんですが、今大会はセッターとのコンビもよく、大事なところでブロックも決めていましたね。怪我を経て成長した選手は、今後ももっと大きく成長してくれるのではないかと期待してしまいます。 ――これまで名前が挙がった選手以外で、注目した選手はいますか? 栗原 「会場全体を巻き込んだ」という印象があるのは、旭川実業(北海道)の笠井季璃選手(3年)。下北沢成徳とのセンターコートでの準決勝では、前、後ろからも決め続けて会場が盛り上がりました。最後は、会場のほとんどの声援が笠井選手に向けられていたんじゃないかと。そういった選手は本当に珍しい。内定したトヨタ車体クインシーズで、いろんなテンポの攻撃を覚えたら、もっと面白いバレーを見せてくれるのではと注目しています。 下北沢成徳のイェーモンミャ選手(2年)は、しなやかで、均整の取れた体つきをしていました。トレーニングをちゃんとやっていることがわかりましたね。パワーもすごくて、思わず声が出てしまうようなスパイクを打っていました。彼女は来年もありますし、どう成長するのか今から楽しみです。 【プロフィール】 栗原恵(くりはら・めぐみ) 1984年7月31日生まれ、広島県出身。小学4年からバレーボールを始め、三田尻女子高校(現・誠英高校)では1年時のインターハイ・国体・春高バレー、2年時のインターハイ優勝に貢献。2001年に日本代表に初選出され、翌2002年に代表デビュー。2004年のアテネ五輪、2008年の北京五輪に出場した。2010年の世界バレーでは、32年ぶりに銅メダルを獲得した。その後、ロシアリーグに挑戦したのち、岡山シーガルズ、日立リヴァーレ、JTマーヴェラスでプレー。2019年6月に現役引退を発表した。引退後はバレーの試合での解説をはじめ、タレント活動など幅広く活躍している。
中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari