今みても美しすぎるレオナルド・ディカプリオ!「タイタニック」を名作たらしめた無限大の原石感
もはや今更語るまでもないかもしれないが、1997年の「タイタニック」でスターダムを確固たるものにしたレオナルド・ディカプリオ。全世界の人々が涙した青年ジャック・ドーソンには、22歳ならではの美青年ぶりとその後の作品で開花させていく"原石感"が宿っているようだ。 【写真を見る】映画界に現れたプリンス!映画「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオ 近年のディカプリオしか知らない映画ファンには、ディカプリオには「華麗なるギャツビー」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で見せた、貫禄ある壮年男性のイメージが強いかもしれない。それらの作品で見せるギラついた野性も魅力的だが、「タイタニック」での彼はまさに映画界に現れたプリンスでもあった。 1990年代前半より映画でのキャリアをスタートさせると、1996年に「ロミオ&ジュリエット」のロミオ役で97年のベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞する。バズ・ラーマン監督によりシェイクスピアの原典から舞台を現代に移し、ヴェローナ・ビーチで展開される若者の悲恋が描かれた。ラーマン監督がこだわった映像美は、耽美的かつ原典の持つ中世ファンタジーの要素も備えていた。象徴的なのが熱帯魚の水槽越しにディカプリオのロミオとクレア・デーンズのジュリエットが初めて出会うシーン。中世風の甲冑を着たディカプリオは水槽越しに見ても美しく、「水もしたたるいい男」のワードがこれほど似合う俳優もいない(この頃から「水」との相性もよいようだ)。 そして「タイタニック」だ。この物語でのディカプリオのジャックは美貌・野性・優しさ・行動力、全てを兼ね備えている。くわえ煙草で乗船券を賭けてポーカーに興じるシーンでは、視線が肉食獣のような輝きを見せる。ローズを助けた縁で一等船客のディナーに招かれて燕尾服で登場すれば、髪はオールバックにして眼差しも優しく、キャルが「見違えた」と驚くのも納得のジェントルマンぶりだ。 現代よりも階級差は苛烈だったタイタニックの時代、貧しい人々は身分違いの富豪を前にすると、つい畏怖し卑屈になってしまうかもしれない。だがジャックは上流階級の乗客に接しても全く臆することがなく、素手でパンをかじり放浪の日々の楽しさを語る。鼻持ちならない一等船室の富豪たちにこう返すジャックのおかげで、見ている我々も溜飲が下がる。 この頃のディカプリオのヘアスタイルは、前髪を艶っぽく左で分けて流すのがトレードマーク。ジャックのヘアスタイルも同様だが、燕尾服でキメた時のオールバックも捨てがたく、大人の俳優へと覚醒する一歩手前の原石感を放つ。 本作の後は「仮面の男」で高慢な太陽王ルイ14世と繊細な青年フィリップの二役、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」ではいくつもの職業に変装する詐欺師フランク・W・アバグネイル・Jrを演じていくディカプリオ。優しさ・青年期の不安定さ・貧しいなりのプライド・王族の高慢さと、彼の眼差しは無数の感情を物語るが、タイタニックでもそのように感じる。 またジェームズ・キャメロン監督がこだわりぬいた撮影は過酷を極めたと言われている。後半の沈みゆく船内の撮影のために、想定以上の水を用いたという。ディカプリオもケイト・ウィンスレットもほぼ真顔で水と戦っているというわけだ。 残念ながら通常版ではカットされてしまっているのだが、アルティメット・エディションではジャックとローズを追ってくるキャルの執事のラブジョイと、浸水するレストランで格闘するシーンがある。ここでラブジョイをぶちのめし「ドーソン家からだ!」とダイヤ窃盗の濡れ衣を着せられて拘束された時の仕返しに一発をお見舞いするところも、ジャックの野性的な魅力がみなぎるワンシーンだ。濡れそぼった髪や身体もセクシーさを増す。 キャメロン監督は時代考証にもこだわっていたように感じる。一等航海士マードックにまつわる改変は批判を浴びたが、基本的にはや乗員・楽団、ちらっと映るだけの乗客も史実をもとに描いていて、映画をもとにタイタニックを考証するファンサイトも生まれている。 あまりにも有名な結末は「ローズが乗った板にジャックも乗れたのでは?」と後年にウィンスレット自ら笑って振り返るほど人口に膾炙しているが、そんな突っ込みが野暮なくらい、映画の中のジャックは美しく燃え尽きた。「生きていてほしい...」と願いつつも悲恋で終わることに納得せざるを得ない、22歳のディカプリオのスターぶりをキャメロン監督はたっぷりカメラに収めてくれた。 文=大宮高史
HOMINIS