地域包括ケアに不可欠~かかりつけ医~
「地域包括ケアシステム」という言葉を皆さんはご存じでしょうか。一度は聞いたことがあるかもしれませんが、詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。今回は地域包括ケアシステムを分かりやすくお伝えし、総合診療かかりつけ医がどのような役割を果たすのかを説明したいと思います。 日本では、第一次ベビーブームが第2次世界大戦後の1947年に起きました。47~49年に生まれた世代を「団塊」と呼びます。この3年間で約800万人誕生しました。 団塊の世代が75歳になる2025年を目途に、国が考えたのが「地域包括ケアシステム」です。75歳以上になると生きていくのに他人の助けが必要になる方が増えるため、いわゆる要介護になっても住み慣れた地域で自分らしく人生の最期を迎えられるようにできた制度です。医療・介護・予防・住まい・生活支援を地域でまとめてサービスできるようにしようとする仕組みです。
◇30分以内の距離で完結
14年に「医療介護総合確保推進法」が施行され、厚生労働省が全国の自治体に推進するよう指示しました。具体的には、住まいから30分以内の距離ですべてのサービスを完結できるようにします。地域ごとに内容は委ねられています。 超高齢社会に突入し、つえ歩行の高齢者が遠い場所まで行かなくても医療が受けられるようにしなければなりません。独り暮らしの認知症の方や、寝たきりの高齢の生活を誰がどのように支えていくのか、人生の最期をどこでどのように迎えてもらうのかなど、地域が一人の高齢者の全体の面倒を見ていくのです。 そこで大事な役割を果たすのが「地域包括支援センター」です。市役所や役場、病院に設置されています。同センターは保健師、社会福祉士、ケアマネジャーという職種が中心となり、相談に来た住民にアドバイスをします。 例えば「認知症になった母親をどうすればいいのか」「寝たきりになってしまいどうしたらいいか」「かかりつけ医を探している」「独り暮らしが心配」「足が不自由になって買い物に行けない」など、生活や健康に不安のある方がやって来ます。 医療に関しては、かかりつけ医を紹介します。介護が必要なら担当のケアマネジャーを見つけて訪問看護、訪問リハビリ、訪問介護などのサービスを入れることができます。介護認定を受けるため、介護の状態を判定しなければならないときには「主治医意見書」という書類を医師に書いてもらわないといけません。 「どこまで日常生活ができるのか」「どっちの足が悪いのか」「まひはあるのか」「排せつは一人でできるのか」「認知症はどこまで進んでいるのか」「どのようなサービスが必要なのか」などを医師が記入します。 自分の生活や病気、特に認知症の状態を分かっている医師、つまり、普段から何でも診てくれている、かかりつけ医がいないといけないのです。 これを読んでいる方々は元気で自分のことのように思えないかもしれませんが、親の状況を考えてみてください。あるいは、自分が80歳になったときの暮らしを想像してみてください。通院している先が総合病院であれば、家の近くのクリニックに変えたほうがいいですし、整形外科にしか通っていないのであれば、家の近くのまとめて診てくれるクリニックをかかりつけにした方がいいのです。