中国に押し寄せるロシア人観光客 スープの味も似た中ロ国境地帯
【東方新報】中国・黒竜江省(Heilongjiang)密山市(Mishan)や吉林省(Jilin)琿春市(Hunchun)などロシア国境に近い中国東北部に、ロシア人観光客が押し寄せているという。中国メディアが、観光ツアーで両市を訪れたロシア人たちの年越しの様子を伝えている。 密山市の主要ホテルでは、12月31日午後10時に「5、4、3、2、1…」とカウントダウンの声が響いた。ロシア・ウラジオストクと中国標準時の時差は2時間。声の主は、ウラジオストク時間で新年を祝うロシア人観光客たちだった。 ロシア人観光客のアナスタシアさんは、「密山市にはロシア語を話せる人が多いのでコミュニケーションが取りやすいですね。何度も訪れているので、私の携帯電話には中国製のモバイル決済アプリも入れています。買い物も便利です」と話す。 一方、琿春市では、ロシア人約2600人が中国のグルメを味わいながら新年を迎えた。琿春市には、吉林省で唯一の対ロシア通関が設置され、商店街にはロシア語の看板も目立つ。ロシア人ビジネスマンなどが多く訪れる国境の町だ。 ロシア人のユリアさんは、ウラジオストクから息子と娘を含む約160人の年越しツアーで同市を訪れた。 ユリアさんは、「ロシアでは、中国で新年を迎えるツアーが大人気です。中国に近い極東エリアだけでなく、他の地域から琿春市を訪れる人も増えており、知名度も高まっている」と話している。 中国東北部には、黒竜江省の中心都市ハルビン市(Harbin)など帝政ロシア風の壮大な街並みが各地に残っている。ロシア人観光客にとって、なじみの深い地域なのだ。 中ロ国境では長い歴史を通じて互いの文化が融合し、意外な共通点が見つかることもある。よく知られているのが発酵野菜のスープだろう。 ロシア料理のスープ「シチー」は、どの家庭でも頻繁に出される日本のみそ汁のようなものらしい。キャベツなどの野菜と豚肉や羊肉、牛肉などを煮込んだシンプルで飽きのこない味が特徴である。 中国に近いロシアの極東エリアでは、春や夏に採れたキャベツなどを家庭で塩漬けにして乳酸菌発酵させたものを保存しておいて、冬にシチーにして食べる。これを「酸っぱいシチー」と言うらしい。 一方、中国東北部でも、秋から冬に採れた白菜を塩漬けにして同じように乳酸菌発酵させた漬物「酸菜」をさまざまな料理に使う。刻んでギョーザやチャーハンに入れたり、スープや鍋料理に入れたりする。 なかでも「酸っぱいシチー」によく似ているのが、酸菜と豚肉を煮込んだ鍋料理「酸菜白肉鍋」だ。ロシア人に出すと「これはロシア料理だ」と思うというから、その風味の近さがうかがえる。 中ロ両国では、コロナ禍が収束したことを受けて、ビザ発給要件も徐々に緩和されている。新しい年を迎えて、中ロ国境を行き来する観光客が増えていくことは間違いないだろう。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。