【機動戦士ガンダムSEED】「虚空の戦場」に見る「21世紀のガンダム」の発火点
オマージュに満ちた展開から浮かび上がる「21世紀のガンダム」の本質
◆オマージュに満ちた展開から浮かび上がる「21世紀のガンダム」の本質◆ スペシャルエディション第1作である『虚空の戦場』はTVシリーズの序盤となる第1話から第21話までの内容を再構成しているが、特に本作の新しい要素を確認しやすいパートとなっている。 というのも、「コロニーで戦闘に巻き込まれて、ガンダムに乗ることになる主人公」「新造戦艦での逃避行」「否応なく戦闘に参加することになる民間人」「月近郊の基地への逃亡」「大気圏突入中の敵の襲撃」というストーリー展開から、第1作『機動戦士ガンダム』への目線を感じられるからだ。 そこからは偉大なファーストガンダムへの熱いオマージュであると同時に、「人種間に生み出される断絶と差別」「友が敵になり立ちふさがる戦場」といった新たな挑戦の意志が浮かび上がってくる。 その意味では、本作の終盤でキラが出会うことになる「敵」――アンドリュー・バルドフェルドの存在も興味深いはずだ。 地球に降りたアークエンジェルに襲いかかるバルドフェルドは “砂漠の虎” の異名を持つエースパイロットであり、プロフェッショナルな軍人だ。彼との出会いと交流はキラに大きな影響を与えることになり、明らかにランバ・ラルを意識した存在であることが理解できる。 しかし当然ながらランバ・ラルと異なる面も数多く持っており、そこから生まれる感情やドラマもまた違う意味を持ってくる。 その違いを意識して本作を鑑賞すれば、『ガンダムSEED』が目指した「21世紀のガンダム」の本質がいかなるものか、見えてくるのかもしれない。 (C)創通・サンライズ
鈴木 雅展