俳優・上白石萌歌さんが30代を迎えるための今とは?「引っ込み思案な自分から一歩踏み出す」
人との関わりの中でしか見えない世界を求めて…上白石萌歌さんインタビュー
たくさん質問をして、コミュニケーションをとって、そこから自分なりに吸収して。上白石萌歌さんは今、自分の世界を、自分なりの方法で広げようとしている。その先にある、「表現」の世界とは。そして、新しいチャレンジとは。「かっこいい30代」を迎えるための、「今」の大切さを語ります。 【撮り下ろし写真8枚すべてを見る】昨年大学を卒業し、仕事一本に。そんな今、上白石さんが思うことは? ◆人と関わりたい気持ちがどんどん大きくなる 24歳にしてキャリアは13年。引っ込み思案で人見知りだった少女時代、そこから逃げずに自分と闘ってきた20代序盤を経て今、上白石さんは早くも30代の自分へ期待をふくらませている。 「周囲の知人がよく話してくれるんです。〝30代はいちばん輝く時期〟〝30代は楽しいよ〟と。そう堂々と言える先輩たちは、とてもかっこよくて、私も数年後にそう言えたら。だからといって、目標を立てて自分に何かを課すのは、どうも苦手です。 その代わり、ものづくりに向き合いながら、先輩方や仲間と一緒に、少しずつ経験を増やしていきたい。人見知りだった私が、人と関わりたい気持ちがだんだん大きくなって──これもすごい進歩なんですけど──いっぱい質問して、コミュニケーションをとって、ひとつずつ吸収して。人と関わるのは怖くない。そう言えるようになった今、一歩踏み出してよかったと感じています」 仕事を始めて以来ずっと「いちばん年下」ポジションだった上白石さん。徐々に中核を担うようになり、「人との関わりの中でしか見えない世界がある」と気づき始めた。 ◆表現することで私は心が満たされる 変化を振り返るときに役立っているのが、上白石さんが中学1年のときからつけている日記。いっとき遠ざかったりしたものの、最近になってまた再開。書くことが、自身の進むべき道を考えるきっかけにもなっている。 「昨年、ようやく大学生という肩書きがなくなり、仕事一本になりました。と同時に、私はこれからどうやっていくのか、すごく考え、日記にもよく書いていました。 今までいつも時間に追われていたから、休日があると不安になってしまったことも。その中で明確になったのは、『表現することで私は心が満たされる』『この仕事しかない』ということでした。 また先日、父に言われてハッとしたことがあって。父は教師という仕事で、私たち姉妹とはまったく違うフィールドだけれど、『教師にとっては教壇が舞台。舞台でパフォーマンスをするという意味では、教師も俳優も同じかもしれないよ』と。 確かにそうだな。だからこそ私も、表現という形で、自分と人の心を満たし、育ててくれた親に恩返しをしたい。と同時に、この家族でよかったと、改めて感じています」 ◆大事なのは、あちこちに推しがあること 上白石さんが言う「舞台」は、演技をする場所全般をさす。10代から経験してきたミュージカルや演劇、ものづくりの楽しさを再確認した映画やドラマ、どれもがかけがえのない表現の舞台。と同時に、心と体でコミュニケーションする場。 そんな中、〝演劇と映像の世界がミックスされたドラマ〟という新ジャンルが加わった。6月5日に最終回を迎えた『滅相も無い』で演じる役の背景には、奇しくも女性の職場やコミュニケーションというテーマが見え隠れしている。 その上で上白石さんは、「だれもが自分と重なるところがあるのでは」と言う。 「『滅相も無い』は、ドラマでありながら演劇の要素もある、新しいジャンルです。そして脚本・監督は、憧れていた加藤拓也さん。私にとってうれしい条件がそろったのはいいけれど…。 役の上とはいえ、過去を独白するという設定はとても難しく、苦しく、かつてない緊張感に押しつぶされそうでした。実際私だったら、自分のことをさらけ出すなんて、できそうにありません。 でも、緊張したときこそ、そんな自分の状態を認めて、何も感じないよりはましだよと、言い聞かせて乗り切ります」 ピンチを乗り切る方法はもちろん、「自分の機嫌をとる方法」をたくさんもっておくことも、仕事を乗り切るために実践していること。 「ポジティブな言葉をくれる友人、ひとりで映画や美術館に行く時間、大好きなひとり焼肉(笑)。昨年はひとり旅で南フランスに行き、マティスの作品がある礼拝堂を見てきました。 大事なのは、あちこちに推しがあること。それは素敵な大人になるために、そして豊かな暮らしのために、欠かせないこと。そうしながらも、この仕事をずっと一生やっていくんだなという漠然とした覚悟も今、生まれ始めています」