【NTTリーグワン2023-24 プレーオフトーナメント特別企画】「すべての覚悟を持ってプレーする」リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京)
もうひとつの準決勝は、レギュラーシーズン16戦全勝の埼玉ワイルドナイツが、横浜キヤノンイーグルスを迎え撃つ。BL東京が今シーズン唯一の黒星を喫したのは埼玉WKであり、決勝で対戦することになればリベンジが期待される。 モウンガの瞳に、警戒の色が宿った。諭すように言う。 「いまの段階で自分が埼玉WKについて、決勝戦を見据えて話すのは、率直に言ってしまうと時間の無駄だと感じます。準決勝に勝たない限り、決勝はないのです。自分も含めて選手全員が、準決勝を勝たないとそれ以降は何もないということを理解したうえで、準決勝にすべてを注ぐべきです。もうひとつのカードについては自分たちにコントロールできないので、自分たちの試合に集中していきたい」 そのうえで、埼玉WKの印象を明かした。去年のプレーオフの情報を持っているのは、日々の真摯な取り組みの表われだろう。 「しっかりといいコーチングを受けていて、いろんなポジションにXファクターとなれるような選手が揃っている。高いスタンダードを備えているチームと感じます。だからといって、埼玉WKが優勝すると決まっているわけではない。去年のプレーオフでも、レギュラーシーズン1位の埼玉WKが決勝で負けていますし」 自身の役割は胸に深く刻んでいる。チームを勝利に導くことを誓う。 「ラグビーはチームスポーツで、15人の選手がいるなかで10番はチームに影響を与えられるポジションだと認識しています。小さい頃からラグビーをやってきて、フィールドの中でもっとも結果に影響を与えられる選手でありたいと考えてきました。ボールを持っていても持っていなくても、アタックでもディフェンスでも、そういう選手でありたい。チームにいい影響をもたらして、優勝へ導きたいですね」 パスとキックのスキルが高く、状況判断はつねに適切だ。優れたランナーでもある。9節の埼玉WK戦では、相手のキックを自陣で収めると、そのまま単独で走り切ってトライを決めて見せた。そのプレーは観衆の目を惹きつけて離さない。 「子どもの頃を思い返すと、プロのラグビーを見ながらこういう選手になりたいとか、ある選手の一挙手一投足にワクワクしている自分がいました。ボールを持っている場面はもちろん持っていない場面でも、この選手が次に触ったらどんなことしてくれるんだろう、と胸を躍らせたものです。そういう感覚を、世界中の子どもたちに与えられたら嬉しいですね。子どもたちにインスピレーションを与えるためとか、憧れる存在になるために、プレーしているわけではないんです。自分がチームを勝たせるためのプレーが、結果的にそういうインスプレーションを与えることになったらな、と」 プレシーズンから積み上げてきたものに、自信を深めている。チームの強みを聞くと、間を置かずに答えた。 「チームを思う気持ち、チームメイトを思う気持ちです。ディフェンスなら、相手に抜かれたあとも必死に戻る。アタックなら、誰かが抜け出したらサポートにいく。苦しい時にどれだけ戻れるか、チームのためにできるか。その気持ちから出てくる懸命に戦う姿が、お互いを支えています。チームのために身体を張れることは、私たちの大きな強みになっています」 BL東京加入にあたって、「休暇ではないし、1年だけでもない」と言い切った。「すべての覚悟を持ってプレーする」との思いに揺らぎはなく、モウンガは2009-2010シーズン以来の日本一へ突き進むチームを力強く牽引していく。 取材・文:戸塚啓 撮影:スエイシナオヨシ <NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 プレーオフトーナメント> <準決勝(1)> ◆5/18(土)14:05 埼玉ワイルドナイツ(D1:1位) vs 横浜キヤノンイーグルス(D1:4位) 秩父宮ラグビー場 <準決勝(2)> ◆5/19(日)14:05 東芝ブレイブルーパス東京(D1:2位) vs 東京サンゴリアス(D1:3位) 秩父宮ラグビー場 <3位決定戦> ◆5/25(土)12:05 秩父宮ラグビー場 <決勝> ◆5/26(日)15:05 国立競技場