悩めるスピードスター、大湯都史樹。セルモ移籍で心機一転もテストでダウンフォース不足に苦しみ下位に沈む「正直かなり焦ってます」
「正直かなり焦っています」 そう語る大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)。彼にとって、鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラ開幕前テストはお世辞にも充実感に満ち溢れたとは言い難いものになった。 【ギャラリー】新カラーリングのマシン続々! スーパーフォーミュラ2024開幕直前の鈴鹿テスト 大湯は今季、トヨタ陣営のセルモに移籍。昨年のように資金的影響でフル参戦できない可能性を開幕前から憂う必要もなく、落ち着いた気持ちでシーズンインできたはずだ。しかも使う車両は、昨年ランキング4位を獲得した坪井翔から受け継いだもの。申し分ないパッケージかと思われた。 しかし大湯は、ウエットコンディションとなったテスト初日午前、雨量が多くなってきたタイミングでスピンし、クラッシュ。午後のセッションをキャンセルせざるを得なかった。概ねドライコンディションとなった2日目も調子は上がらず、午前セッション14番手、午後セッション16番手に終わった。 昨年はTGM Grand Prixで2度のポールポジションを獲得するなど、速さに定評のある大湯だが、そのようなキレのあるパフォーマンスは現時点で引き出せていない様子だ。 テスト初日を終えて、大湯はグリップの不足、特にダウンフォースが得られていないと訴えていた。クラッシュしたタイミングも、本来はプッシュを控えるのがベターな雨量であったものの、マシンに手応えがなかったが故にしっかりと走って状態をチェックしたいという思いが出てしまったという。 テスト2日目に向けては「明日に向けてこうしようというものが明確にあるので、ある意味ポジティブに考えられています」と語っていた大湯。しかし2日目を終えても、ダウンフォース不足を感じる点は変わらなかった。 「メカニカルのグリップはあると言えばあるのかもしれませんが、あまり取れていない。その中でダウンフォースはより得られていない。それでグリップがないという一番良くない状態です」 そう語る大湯。坪井が乗っていた昨年とのセットアップの方向性の違いについて聞くと、詳細については語らなかったが、共通パーツ化されたダンパー以外にも「変わっている部品」があり、その影響も受けているのではないかと話した。 「ダンパー以外にも、去年から変わっているもの、使えないものも多々あります。坪井選手の時はそういったものをうまく利用しつつ、一歩間違えたらバランスが崩れてしまう状態の中で、うまく帳尻を合わせていたからこそあのような位置にいれたんじゃないかと、昨年末のテストの時から思っていました。今回のテストではそこの部分の調整が進んでいないと感じています」 「正直かなり焦ってはいます。今回ある程度実感できるものがあれば、(開幕戦のフリー走行から)しっかりメニューを組んでガラッと(セットアップを)変えたりすることもできますが、こんなに調子が悪い中でレースウィークを迎えるのはなかなか厳しいと感じています」 心機一転、キャリアの再出発を図る大湯。開幕前テストからつまずく形となったが、この悪い流れを払拭できるか。
戎井健一郎
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