<解説>「古畑任三郎」 オチを覚えていても面白かった理由
ミステリーの大きな要素である「誰が?」「なぜ?」「どうやって」の中で、「誰が?」といういわゆる“大オチ”をあえて最初に明かしてしまう手法だが、その分、後々の記憶には、例えば「犯人は“キムタク”」という“結果”よりも、「“キムタク”が古畑に殴られたシーン」といった“過程”の方が残りやすい。終盤で犯人が判明するタイプの連続ドラマは、後で振り返っても犯人を思い出した時点で見ないまま満足してしまうことも多いが、倒叙式の場合はおぼろげな記憶に残った名シーンを再確認したいという動機も生まれやすい。
倒叙式の作品は、読者が“大オチ”を知っている“神の視点”にあるため、感情移入がしづらいとして抵抗のあるミステリーファンが一定数いるのも確かだ。しかし、「古畑任三郎」は前述の豪華ゲストや練り込まれた展開も相まって色あせないヒット作として不動の地位を築くことになったといえるだろう。TVerやFODではまだ見られる作品も多い。改めて不朽の名作の数々を楽しみたい。