田中圭”宏樹”が本当の父親だったら良かったのに…深澤辰哉の立場が一転した理由とは?『わたしの宝物』第3話考察レビュー
松本若菜主演のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)が放送中。本作は、「托卵(たくらん)」を題材に、”大切な宝物”を守るために禁断の決断を下した主人公と、その真実に翻弄されていく2人の男性の運命を描く愛憎劇だ。今回は、第3話のレビューをお届けする。(文・西本沙織)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】田中圭の表情から愛が溢れてる…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『わたしの宝物』劇中カット一覧
運命とは残酷なもの…。 「栞」の名前に込められた罪
「あの子の名前、宏樹につけてほしいの」 美羽(松本若菜)にそう言われ、宏樹(田中圭)が子どもと向き合うことになった『わたしの宝物』第3話。 「美羽」の名前は、父親がつけてくれたものだった。だからなのか、両親が離婚して父親とほとんど会ったことがなくても、不思議と近くにいるように思えた。夫の宏樹は、子どもの父親にはなれないという。だったら、せめて子どもが寂しい思いをしないように。そう言葉にする美羽は、もうすっかり母の顔になっていた。 宏樹は手帳一冊を埋めるほどある候補のなかから、「栞(しおり)」の名を選ぶ。自分はこの子に何もしてあげられないけれど、道に迷わず進んでほしい、と。“道しるべ”の意味を持つ「栞」に、そんな切なる思いを込めた。 ただ、宏樹が「栞」の名前を思い浮かべたのは、母子手帳に挟んであった美羽の手作りの“しおり”がきっかけ。そのしおりには、幼なじみ・冬月稜(深澤辰哉)とのまばゆいほどの思い出が詰まっている。宏樹が子どもへ贈る最初のプレゼントにまで冬月が絡んでくるとは、なんて複雑で罪深いのだろう。
「托卵」という禁忌を犯した代償
喫茶店のマスター・浅岡忠行(北村一輝)が宏樹に告げた「もう父親始まっちゃってんじゃないか?」は、今思えばものすごく本質を突いた言葉だったのではないだろうか。宏樹は「俺、父親するの無理なんで」と口に出しつつも、行動は真逆で、いつも栞を目で追っていた。 疲れて眠る美羽の代わりに哺乳瓶を片付け、愛おしそうな顔で栞の頬をツンツンとつついたこともあった。美羽との会話では以前の荒々しさがなくなり、気遣う言葉が増えていく。目線が、所作が、纏う空気が、すべてが優しい。表情からも栞への愛おしさが溢れ出るその姿は、まさに子を愛する父親そのものだった。 第1話ではモラハラ夫だった宏樹が、心を入れ替え、別人のように穏やかになっていく。そんな宏樹をみていて思う。宏樹が本当の父親だったらどんなによかっただろう、と。栞が自分の子どもでないと発覚したときの、宏樹の絶望は計り知れない。でも、宏樹が「托卵」の事実を知ってしまう可能性は、確実に存在する。想像しただけでも、地獄でしかない…。 一方で、宏樹が“いい夫”や”いい父親”になっていくたび、美羽の心には無数の棘が刺さっていく。これが、美羽の消えることのない“罪悪感”であり、「托卵」という禁忌を犯した代償だった。