ブロックチェーンの新バズワード「インテント」──その仕組みとリスク
インテントを理解する
ブロックチェーンは、巨大でグローバルなコンピューターと考えることができる。従来、ユーザーは詳細な指示(例えば、ユニスワップを使ってトークンAとトークンBを特定の価格で交換する)を出し、ブロックチェーンはそれをステップ・バイ・ステップで実行する。 しかしインテントの新しい世界では、このモデルが覆される。ユーザーは、自分が何をしたいのか(例えば、AトークンをBトークンに最良の価格で交換する)を具体的に記載することなく、プロトコルに詳細を任せる。 例えば、タクシーを考えてみよう。従来のブロックチェーンサービスは、運転手にどこで曲がるかを毎回教えるようなものだった。ルートが曲がりくねっていたり、近道が見つけにくかったりすると、面倒でコストがかかる。一方、インテントを使うことは、運転手に目的地を伝え、あとは座って運転手を信頼することだ。 Anoma、Flashbots、CoW Swapなどのブロックチェーンやプロトコルが、すでに暗号資産ユーザーにインテント中心のサービスを提供している。ユーザーはこれらのサービスに「これらのトークンを最良の価格でスワップする」といった目標を提示し、サードパーティ・ソルバーにそれを有料で処理してもらうことができる。
仕組み
プラットフォームによって、「インテント」のアイデアを表現するために使う言葉は異なるが、一般的な前提は変わらない。 現在、ほとんどのインテントベースのプロトコルは、ある種の「インテント発見」システム、つまり「ユーザーが欲しいものを伝える」場所から始まるとブプタニ氏は説明。ブロックチェーン用語で言えば、こうした発見の場は「mempool(メモリプール)」、つまりまだ処理されていないトランザクションの待機場所と捉えられる。 インテントは「『USDコイン(USDC)を持っていて、それを別の資産に変える方法を考えたい。別のチェーンや特定の方法で行いたい』というようなものでも良い」とブプタニ氏。 「表現できるインテントの複雑さに制限はない」、そして「ソルバーの市場ができる」とブプタニ氏は続けた。ソルバーはインテントを「聞き」、適切な価格であればそれを実現する。これらのインテント・ソルバーは、自動化されたアクターであり、「ユーザーが◯◯を望んでいる? OK、彼らの代わりにそれをやって、手数料を稼がせて欲しい」と語っているような存在だ。 このような仕組みには、聞き覚えがあるかもしれない。コインベース(Coinbase)にイーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)の交換を依頼したり、1inchのような取引所アグリゲーターにソラナ(SOL)を最も高い価格で販売するよう指示したりするとき、私たちはインテントを表明している。 「インテント」は、暗号資産の世界における他の多くのものと同様に、すでに存在する現象を説明するための手の込んだ方法だ。 2023年のインテントの巧妙さ、そしてこの言葉がこの1年で盛り上がってきた理由は、新旧を問わず多くのサービスが、ユーザーフレンドリーなインテントを暗号資産の分散型の精神に適合させようとしているためだ。事実上インテントは、あらゆるユースケースにドラッグ&ドロップできるようになっている。 ほとんどの新しいインテントベースのプロトコルは、可能な限りベストな価格でユーザーの要求を満たすために競争するソルバーのネットワークにアウトソーシングすることで、システムを「分散化」している。 この競争システムは、中央のサードパーティがすべてのユーザーニーズを満たすことがないようにすることを目的としている。