舞台に立ち続ける森田剛が「客席は見ない」「見えてしまったらわざとピントをずらす」その理由とは?
客席がずっと真っ暗だったらいいのに
──稽古はこれからだそうですが、どんな準備をされるのですか? いつも決めているのは「台本を覚えていく」ということです。ただ、今回はまだ台本がないので、身一つで行くことになりますね(笑)。 稽古をしながら、役の人物や役同士の関係を作っていく作業は面白いです。ただ、難しさもあります。初日は決まっているから、間に合うのだろうかとストレスを感じることもありますけど、そういうストレスも僕は感じていたいんですよね。 ──時間が許せば、ずっと稽古をしていたいですか? いや、そうとも限らないです(笑)。もちろん、あと1週間、せめて3日あれば……と思うことはありますけど。 演出家や監督のイメージするものを形にしたいという想いは映像も舞台も同様にあります。ただ、映像は監督のものだけど、舞台は本番が始まったら、役者のものというところがある気がします。 ──その日、その回ごとに客席の雰囲気が違うそうですね? 天気によっても変わると聞きます。 僕は(客席を)全然見てないです。ずっと真っ暗だったらいいのにと思います。たまに照明の具合で客席が見えてしまうことがあるのですが、そのときはわざとピントをずらします(笑)。それでもお客さんのエネルギーみたいなものを感じるから、舞台と客席は見えない何かでつながっているのでしょうね。 ──観客の反応は気になりませんか? 全然気にならないです。たとえば笑いのあるシーンで笑いが起きなかったとき「今日はなぜ笑わない?」と悩む方もいらっしゃるみたいですが、僕はそういうのがないです。笑いが起きようが起こらなかろうがどっちでも構わない。 ──役に入り込んでいるから気にならないということですか? というより、気にする必要はないんじゃない? と思っています。僕が気になるのは客席よりも舞台上。共演者の方が何か心地悪さや違和感を持ったら、僕も同じようにそれを感じるし、演出家の方が「今日は良かったね」とおっしゃったら、それが最高と思っています。 ──同じ芝居を何十公演もやることについては、飽きることはないですか? ないです。その都度、発見もありますし、修正もできますし。役に関して、「通る瞬間」というのがあるんですよ。腑に落ちるというか。 今日はこの人のこのセリフがすごく響くなとか、同じ芝居をしていても日々違うふうに感じています。それが面白いですね。舞台は、そこでしか味わえないものがあるなといつも思います。