【応急仮設終了】意向調査を丁寧に(8月1日)
県は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で避難した大熊、双葉両町の住民が入る応急仮設住宅の無償供与について、2026(令和8)年3月末で終了すると決めた。合わせて593戸、966人の対象者は、それぞれ入居状況や事情が異なる。負担増が予想される新たな生活に希望が持てるよう、丁寧に対応すべきだ。 応急仮設住宅の無償供与は震災・原発事故が起きた2011(平成23)年春に始まった。2017年4月からは避難区域が設定された10市町村で継続され、復興の進み具合に応じて順次、終了してきた。2020年4月以降は、原発事故の影響で大半が帰還困難区域となった大熊、双葉の両町だけに適用されている。 1年半後の終了について、県は帰還の受け皿となる住宅や商業施設などの生活環境がさらに充実する点などを理由に挙げている。両町は特定復興再生拠点区域(復興拠点)が動き始め、福島再生賃貸住宅も整備されている。いわき市に本拠を置くスーパーマーケットが大熊町に進出する計画も公表された。一歩一歩、復興に向かっている状況を踏まえ、判断したのだろう。
両町の無償提供の状況をみると、大熊町の364戸、591人のうち県外は130戸、233人、双葉町の229戸、375人のうち県外は109戸、204人となっている。大熊では4割、双葉では5割以上が県外に避難した住民で、古里に戻りたいという気持ちをどれだけ持っているのかをしっかりと確かめる必要があるのではないか。 また、民間の賃貸住宅を借り上げた「みなし仮設住宅」で生活しているケースは83%に達している。県や市町村などの公営住宅ならば収入に応じて家賃の減免措置があるが、民間には求めにくい。無償供与がなくなれば、転居せざるを得ない場合も出てくるだろう。県は9月から対象者の意向調査に入るが、戸別訪問なども重ねながら、円滑に移行してもらいたい。 今回の決定で、住環境などハード面での県の支援はひとつの節目を迎えたと言える。とはいえ震災・原発事故による避難者は、いまだ約2万6千人を数える。心と体の健康を維持するソフト面での支援の重要度はさらに増してくるはずだ。(安斎康史)